monopolize -独占ー
〜Luffy Side〜
目の前で,大切な大切な剣士が,呑みこまれようとしていた。
ゆっくりと,ゆっくりと,しかし着実に,その身体は沈んでゆく。
「ゾロっ!!」
あらんかぎりの声で,叫ぶ。
手足は,矢で縫い付けられ,言うことをきかない。
自由になるのは,顔だけだ。
何としても。何としても,ゾロだけは取り戻さなくては。
大切な,大切な,俺の剣士。
ようやく手に入れた,気高い瞳をもつ,まっすぐな剣士。
だめだ・・・だめだ,だめだ・・・
俺の側から居なくなるなんて,許さない。
コイツは,俺の物だ。
他の物になるなんて,許さない。
そして,お前は・・・簡単に人の物になるヤツなんかじゃ,ないだろう?
いつまで寝てるんだよ。
いい加減,目を覚ませよ。
お前は,強えじゃねぇか。
・・・そんな想いもむなしく,ゾロの身体はピクリともしない。
すぐ側にいるのに。
もう少しなのに。
少しずつゾロの身体は沈み・・・リリィの中へ,完全に取りこまれようとしていた。
「ゾロ〜〜〜〜〜〜〜っっ!!!」
喉がはりさけんばかりの声で叫んだ。
俺の想いに反して,俺の首は,はりつけられている身体へと戻ってゆく。
その瞬間,自分の目からこぼれ落ちた水滴が,ゾロの顔を濡らした気が,した。
ゾロの身体は,リリィの中へ,跡形もなくゆっくりと消え去った。
―――――失った。
俺は,何もかも,失った――――――
〜Zoro Side〜
よどんだ気配。
重い気配。
全身を,そんな空気がまとわりつく。
そこにあるのは,悲しみ,孤独,絶望―――――
闇の沼の中に,ゾロは居た。
流れ込んでくるのは,悲痛な思い。
「皆,居なくなってしまった」
「どうして,俺を独りにした」
「独りにしないでくれ」
「サビシイ,ツライ,コワイ・・・」
嗚咽とも,すすり泣きともいえない,沢山の声が,ただただ,聞こえてくる。
そう・・・か。
俺は,独りになったのか。
――――ヒトリニ,ナッテシマッタ――――
心の中に,冷たい闇がじわじわと広がってくる。
ヒトリ・・・ヒトリハ,サビシイ・・・
周りの声に合わせるよう,重ねるようにそんなことを思った時,
微かに,気配の違う声が聞こえた。
「・・・ゾロっ・・・」
『・・・ルフィ・・・』
小さくもはっきりと聞こえた声。
それに答えるよう,叫んだつもりだったが,自分の声は出なかった。
自分が,唯一,認めた男。
「コイツにならついて行ってもいい」と思った男。
「船長(キャプテン)」と世界でただ一人,呼べる男。
誰かのために剣を振るうなんて,考えたこともなかった俺が,この男のためになら,喜んで剣を捧げる。
俺の,唯一無二の,絶対的存在。
ルフィが,俺を呼んでいる。
悲痛な声で。
・・・お前も寂しいのか?
そんな声で呼ばなくたって,俺はお前の側に居るよ。
お前の側からなんて,離れられねぇ。
・・・未来の海賊王が,何て声を出してんだよ。
辺りの気配を探るが,ルフィは見つからない。
・・・どこだ?
周りは,暗闇しかない。
手さぐりをしようとして,身体の感覚が全くないことに気がついた。
ああ・・・そうか。
迷子になってんのは,俺か・・・
お前の側に行けないのは,俺の方か。
そんな思いを巡らせながらも,どんどんと意識は闇の沼へと沈んでゆく。
「ゾロ〜〜〜〜〜〜〜っっ!!!」
今度は,ひどく大きく聞こえた。
聞いているこっちの胸がはりさけそうになる,声。
・・・なんて声で俺を呼んでやがる。
わかってるよ。
俺は独りじゃねぇ。
お前が居る。
わかったから,そんな必死な声で呼ぶなよ。
俺は,お前の強くてまっすぐな瞳が好きなんだ。
だから,そんな声で俺を呼ぶな。
ポッ・・・と自分の頬に水滴が落ちた気がした。
ルフィの泣き顔が,フラッシュのように頭に浮かぶ。
・・・泣いてやがんのか。
俺が居なくなりそうで,泣いてるのか。
大事なものをとりあげられて,ダダをこねるような,ルフィの泣き顔。
フッ,とゾロは微かに笑った。
そんなに,俺が居なくなるのが嫌だったら,迎えに来ればいい。
俺が迷子なんて,いつものことだろう?
だから,お前が迎えに来い。
海賊は,盗られたら奪い返してなんぼだからな。
だから,早く。
早く,迎えに来い・・・
「・・・ルフィ・・・」
*********************************************************
気がついたら,身体がヒドくだるかった。
どのぐらい寝ていたのか。
よく寝ていたことは,間違いない。
「ふぁ〜〜〜・・・よく寝た。」
周りを見ると,仲間たちも同じような寝ぼけ眼だ。
辺りは一面,荒れ地になっている。
・・・俺たちは,リゾートしにきたんじゃなかったっけ・・・
全く,とんでもない目にあったもんだ。
得体の知れない,変なモノに取りこまれそうになったことは覚えている。
唯一,聞こえた声は,ルフィだけだった。
ならば。
あの男は闘い,そして勝ったのだろう。
俺を,仲間たちを取り戻したのだ。
横になってのびているルフィを見つけて,仲間と共に駆け寄る。
ルフィは「しししっ」と言いながら,最高の笑顔を俺たちに向けた。
ルフィは,仲間を取り戻すために,自分がどれだけ頑張ったのか,なんて,俺たちには言わないだろう。
だから・・・。
お前の,痛いほどの俺への想いなんて,聞かなかったことにしてやる。
俺が,こんなにも,お前を求めて,お前から離れられないだなんて,言わないでいてやる。
ただ,共に,歩んでいこう。
―――――――海賊王の側には,大剣豪がお似合いだろう?―――――――
2010.12.09
(PCIN 2010.12.27)
目の前で,大切な大切な剣士が,呑みこまれようとしていた。
ゆっくりと,ゆっくりと,しかし着実に,その身体は沈んでゆく。
「ゾロっ!!」
あらんかぎりの声で,叫ぶ。
手足は,矢で縫い付けられ,言うことをきかない。
自由になるのは,顔だけだ。
何としても。何としても,ゾロだけは取り戻さなくては。
大切な,大切な,俺の剣士。
ようやく手に入れた,気高い瞳をもつ,まっすぐな剣士。
だめだ・・・だめだ,だめだ・・・
俺の側から居なくなるなんて,許さない。
コイツは,俺の物だ。
他の物になるなんて,許さない。
そして,お前は・・・簡単に人の物になるヤツなんかじゃ,ないだろう?
いつまで寝てるんだよ。
いい加減,目を覚ませよ。
お前は,強えじゃねぇか。
・・・そんな想いもむなしく,ゾロの身体はピクリともしない。
すぐ側にいるのに。
もう少しなのに。
少しずつゾロの身体は沈み・・・リリィの中へ,完全に取りこまれようとしていた。
「ゾロ〜〜〜〜〜〜〜っっ!!!」
喉がはりさけんばかりの声で叫んだ。
俺の想いに反して,俺の首は,はりつけられている身体へと戻ってゆく。
その瞬間,自分の目からこぼれ落ちた水滴が,ゾロの顔を濡らした気が,した。
ゾロの身体は,リリィの中へ,跡形もなくゆっくりと消え去った。
―――――失った。
俺は,何もかも,失った――――――
〜Zoro Side〜
よどんだ気配。
重い気配。
全身を,そんな空気がまとわりつく。
そこにあるのは,悲しみ,孤独,絶望―――――
闇の沼の中に,ゾロは居た。
流れ込んでくるのは,悲痛な思い。
「皆,居なくなってしまった」
「どうして,俺を独りにした」
「独りにしないでくれ」
「サビシイ,ツライ,コワイ・・・」
嗚咽とも,すすり泣きともいえない,沢山の声が,ただただ,聞こえてくる。
そう・・・か。
俺は,独りになったのか。
――――ヒトリニ,ナッテシマッタ――――
心の中に,冷たい闇がじわじわと広がってくる。
ヒトリ・・・ヒトリハ,サビシイ・・・
周りの声に合わせるよう,重ねるようにそんなことを思った時,
微かに,気配の違う声が聞こえた。
「・・・ゾロっ・・・」
『・・・ルフィ・・・』
小さくもはっきりと聞こえた声。
それに答えるよう,叫んだつもりだったが,自分の声は出なかった。
自分が,唯一,認めた男。
「コイツにならついて行ってもいい」と思った男。
「船長(キャプテン)」と世界でただ一人,呼べる男。
誰かのために剣を振るうなんて,考えたこともなかった俺が,この男のためになら,喜んで剣を捧げる。
俺の,唯一無二の,絶対的存在。
ルフィが,俺を呼んでいる。
悲痛な声で。
・・・お前も寂しいのか?
そんな声で呼ばなくたって,俺はお前の側に居るよ。
お前の側からなんて,離れられねぇ。
・・・未来の海賊王が,何て声を出してんだよ。
辺りの気配を探るが,ルフィは見つからない。
・・・どこだ?
周りは,暗闇しかない。
手さぐりをしようとして,身体の感覚が全くないことに気がついた。
ああ・・・そうか。
迷子になってんのは,俺か・・・
お前の側に行けないのは,俺の方か。
そんな思いを巡らせながらも,どんどんと意識は闇の沼へと沈んでゆく。
「ゾロ〜〜〜〜〜〜〜っっ!!!」
今度は,ひどく大きく聞こえた。
聞いているこっちの胸がはりさけそうになる,声。
・・・なんて声で俺を呼んでやがる。
わかってるよ。
俺は独りじゃねぇ。
お前が居る。
わかったから,そんな必死な声で呼ぶなよ。
俺は,お前の強くてまっすぐな瞳が好きなんだ。
だから,そんな声で俺を呼ぶな。
ポッ・・・と自分の頬に水滴が落ちた気がした。
ルフィの泣き顔が,フラッシュのように頭に浮かぶ。
・・・泣いてやがんのか。
俺が居なくなりそうで,泣いてるのか。
大事なものをとりあげられて,ダダをこねるような,ルフィの泣き顔。
フッ,とゾロは微かに笑った。
そんなに,俺が居なくなるのが嫌だったら,迎えに来ればいい。
俺が迷子なんて,いつものことだろう?
だから,お前が迎えに来い。
海賊は,盗られたら奪い返してなんぼだからな。
だから,早く。
早く,迎えに来い・・・
「・・・ルフィ・・・」
*********************************************************
気がついたら,身体がヒドくだるかった。
どのぐらい寝ていたのか。
よく寝ていたことは,間違いない。
「ふぁ〜〜〜・・・よく寝た。」
周りを見ると,仲間たちも同じような寝ぼけ眼だ。
辺りは一面,荒れ地になっている。
・・・俺たちは,リゾートしにきたんじゃなかったっけ・・・
全く,とんでもない目にあったもんだ。
得体の知れない,変なモノに取りこまれそうになったことは覚えている。
唯一,聞こえた声は,ルフィだけだった。
ならば。
あの男は闘い,そして勝ったのだろう。
俺を,仲間たちを取り戻したのだ。
横になってのびているルフィを見つけて,仲間と共に駆け寄る。
ルフィは「しししっ」と言いながら,最高の笑顔を俺たちに向けた。
ルフィは,仲間を取り戻すために,自分がどれだけ頑張ったのか,なんて,俺たちには言わないだろう。
だから・・・。
お前の,痛いほどの俺への想いなんて,聞かなかったことにしてやる。
俺が,こんなにも,お前を求めて,お前から離れられないだなんて,言わないでいてやる。
ただ,共に,歩んでいこう。
―――――――海賊王の側には,大剣豪がお似合いだろう?―――――――
2010.12.09
(PCIN 2010.12.27)
作品名:monopolize -独占ー 作家名:碧風 -aoka-