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ふうりっち
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novelistID. 16162
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=4.1= プロイセン・ブルー(仮)

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「ヴェスト~、なに騒いでるんだ~? もうすぐホットケーキが……」

 不自然な物音を聞きつけプロイセンが寝室のドアを開けてみると、そこには見覚えのない青年が佇んでいた。白き法衣を纏う彼は、突然開いた扉に動じる動じることなく柔和に微笑むあ

たり、油断ならない。

「おや…見つかってしまったようですね」

 相手から間伸びた声を耳にした途端、ドイツと同色でありながら、しかし彼よりももっと濃い碧色の双眸が、不審者をねめつける。

「誰だ、てめぇッ!」

 敵陣内あっても飄々とした態度を崩さない姿は、本当に油断ならない。一瞬でも視線を逸らせば、その隙をつかれそうでプロイセンは間合いがつめられずにいた。

「私は、遠方より来訪した魔導師でございます。若き騎士様」

 恭しく頭を下げのち、くすりと笑ってみせた。その笑みには朗らかな印象の中にあって、漆黒の瞳は凍てつく氷のような冷酷さを孕んでいる。それに魅入られた瞬間、プロイセンの肌が

あわ立つ。寒気とは違い、まるで恐怖にうち震えるような戦きに襲われ床へ膝を付き添うになると、視界の端に弟の姿を捉えた。たちまち震えは怒りへと変わり、プロイセンの苛立ちが一

層高まる。

「てめぇ、ヴェストに何しやがったッ!」
「若き王をお迎えにあがっただけ。決して、手荒な真似は…」

 鬼気迫るプロイセンからに対し、青年はまったく動じる様子は見せない。むしろ堂々とした振る舞いを伺わせた。
 何より「お迎え」と口にするわりにドイツへの扱いはぞんざいといえる。青年の足元に倒れるドイツは微動だにしない。もしかすると…そんな疑念がプロイセンの脳裏をよぎるほどだ。

「迎えだぁ? お前のような奴は、俺たちの知り合いにいねぇぞ!」
「当たり前でございます。私は、さほど名の知れた魔導師ではございませんので、若き騎士様がご存じないのも致しかたのないこと。しかし---」

 にやりと口角を挙げるなり青年は指印を結び、唇が小さく動くと同時に室内が閃光に包まれた。

「なっ、てめ…!」

 咄嗟にプロイセンは閃耀から双眸を護るよう両腕を貌の前にかざすが、強すぎる煌りは到底防ぎきれない。それでも瞳を護りつつ、相手から意識を逸らさないよう全神経を集中させた。
 いまここで一瞬でも気を抜けば、弟の身に善からぬことが起こることがわかるだけに必至だった。しかし、そんな抵抗をあざ笑うかのように、青年は呪術を強めてくる。

「若き王…お目覚めください。そして、我らの御前に…」

 直後、閃光は爆発するするように広がり、あまりの眩しさにプロイセンは思わず腕で光を遮ったが、光だけでなく突如巻き起こった風圧が彼の身体を後方へとおしやる。

「…痛ェッ!」

 均衡を失った肉体が部屋の隅へと飛ばされ、受け身を取れなかったせいで背中を壁にしたたか打ち付けた。一瞬、意識が飛びかけたが室内に響く声によってそれは免れたものの、揺らぐ

視界のなか事態は急転を迎えようとしていた。

「さぁ、今こそ覚醒のときです!」

 パンッとかしわでを鳴らすように青年が両手を打ち鳴らせば、それまで室内に広がっていた閃光が委縮しドイツの身体を包み込んでいく。

「…ヴェストッ! ヴェストッ! 目を開けろッ!」

 プロイセンの叫びも虚しくドイツが目覚めることはなく、その肉体はゆっくりとドイツの肉体を光球に包み込んでいく。

「若き王……」

 青年は両手を掲げ呪術めいた言葉を口にしながら、光球を恍惚そうにみつめている。それ対し、プロイセンは今すぐ助けられない自分の失態を悔やみながら、忌々しそうに双眸を細めて

いた。




続く→