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平凡な僕と非凡な君で10題

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SS本よりいざみか部分のみ。
出来のいいやつを試し読みに持ってきているような気がしないでもないです。






なぜか気が合う


 気が合うね、と臨也に言われ、帝人は奇妙な既視感を得た。あれ、どこかで同じことを言われたような気がすると思い記憶を遡れば、先日臨也に同じようなシチュエーションで、奇遇だね、と言われたことを思い出した。
 別に学校からの帰り道で彼に会ったからと言って、気が合うとも思っていないし奇遇だとも思わない。帝人は非日常が大好きだが、危険なことに巻き込まれて命を落としたいとは思わないし、友達や大切な人たちが巻き込まれて辛い目に遭うのはごめんだ。
 無意識に鞄を抱きしめて、そうですかね、と数メートル先の彼に応えた。臨也はいつものように、何だかすべてわかっていそうな笑みで両腕を広げた。
「あっれー、帝人君信じない? こういう非科学的なこと」
「臨也さんに偶然とかいうものが存在しているとは、今までの経験上思えないんですが…」
「ああ、俺限定で信じてないわけね。それは気分いいなあ!」
 帝人は目を丸めた。それは臨也相手にはいつものパターンである。驚いたからというよりもむしろ、相手が折原臨也だからしてしまう条件反射、なのである。けれど驚いていないと言えば嘘になった。微妙な話だ。
「え、そうなんですか?」
「勿論! だってシズちゃんは偶然、さも偶然、を装っているかもしれないけれどそれは閑話休題として。取り立てと称したあの破壊活動の最中に帝人君に会ったりしちゃう訳でしょう。至って普通じゃないか。でも俺はこうやって君と俺の気が合うっていう事実を事実にしてしまうために君に会いに来るんだよ!」
 彼はくるりと一回転した。ファー付きのコートはいつの季節にも着ているなあと帝人はどうでもいいことを思って、はあ、と相槌を打つ。普通は逆だろう。偶然出会うことこそが運命で、人はどうしたってそういうものにときめきを覚えてしまったりする。特に女の子はそうに違いない。まあ自分は女の子じゃないからときめきなど与えられても困るのだけれども。
 だいいち。帝人は思う。世の中にあるのは結局必然なのだ。自分たちのような平凡な人間は、目の前にいるような策士が作り出し用意されたいくつかのルートを選んでいるに過ぎない。
 それでいいんですか、と帝人に問われ、臨也はもちろんだねと繰り返し述べ、さも楽しそうに笑った。
「運命は感じないけど、愛の深さは感じるだろう?」