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『flat』 のパロ的な

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「ただいま帰りました」

私が学校から帰りますと、目の前には小さな男の子が立っていました。
おそらく私の腰ぐらいの背丈でしょうか。
近所の子供ではないように思います。

「・・・どなたでしたかしら?」

さらさらの金色の髪に、まるで空を映したかのような青い瞳。
その瞳でじぃっと私のことを見上げておりました。
いつも見上げることの多い私ですから、見上げられるというのはとても新鮮です。

「こんにちは」

少し膝を折ってご挨拶すると、なぜかプイッとそっぽを向かれてしまいました。
な、何故でしょうか?
とにかくキッチンへ行けば兄様がいらっしゃる筈です。
兄様に聞けば、事情がすべて分かるでしょう。

「お兄様」

いそいそとキッチンへと向えば、男の子も黙ったまま私のあとをついてくるではありませんか。か、可愛らしいです。それにどうやら怒らせてしまったようではないようで、ほっといたしました。

「お兄様、ただいま帰りました」
「おや、早かったですね」

やはりロディ兄様はキッチンにいらっしゃいました。
お菓子を作る途中だったようで机の上にはずらりと材料やら器具が並んでおりました。

「ああ、ちゃんとご挨拶は済みましたか?」

いつのまにか私の隣に立っていた男の子に、ロディ兄様が話し掛けました。
男の子は私の方をちらと見上げてから、ふるふると首を横に振りました。

「それはいけませんね。挨拶は大事ですよ」
「あの、お兄様」

足元からしゅんと気落ちした空気を感じて、私は慌てて兄様に声を掛けました。

「この子は一体どちらの?」
「そういえば言っていませんでしたね。ルーですよ。今日から預かることになりました」
「ルー君?」
「ほら、あの困った人の弟です。」
「ギルベルトおじ様の!まあ、ではルートヴィヒ君だったのですね。この前お会いした時は赤ちゃんでしたのに」

とてもとても小さくて可愛らしい赤ちゃんでした。ギルベルトおじ様の腕に抱かれて、ニコニコと笑っていたのが昨日のことのように思いだされます。
時の流れは早いということを、この時初めて体感いたしました。

「貴女もゆっくりとしていますねえ」

誰に似たのでしょうねとロディ兄様に笑われてしまい、ちょっと恥ずかしかったです。

「あの人とバッシュが一緒に仕事をすることになりましてね。しばらくの間は、ルーの保
育所の迎えと夕食の面倒をみることになりました。夜にはここに帰ってきますから」

ここの所、バッシュ兄様が忙しくされていることは知っておりましたが。
ギルおじ様もバッシュ兄様も同じ職種についておりますから、なにかと一緒に組んで仕事をする方が効率が良いのだそうです。そのための準備にどうしても時間をとられていまい、おじ様もバッシュ兄様も困っていたので、いっそ我が家で預かろうとロディ兄様が提案されたのだそうです。

「ですからリヒテン、貴方にも色々と助けてもらうことになると思いますが、」
「はい。私にできることでしたら何でも言って下さいな」
「では、よろしくお願いします」

ロディ兄様やバッシュ兄様に、私だっていっぱい助けていただいています。
まだ学生でなにか恩返しができる立場ではありませんが、少しでも兄様達の力になれるのであれば喜んでお手伝いいたします。

「ルー、あらためてちゃんとご挨拶なさい」

ロディ兄様はそう言いながら、ルート君を手招きしました。
ルート君も素直にロディ兄様の側に行くと、くるりと私の方へと向き直りました。

「こんにちは。るーとびひです」

初めて聞くルートさんの声は少し高い可愛らしい声でした。

「こんにちは。私はリヒテンです。ルート君、仲良くしましょうね?」

するとルート君は、少し頬を赤くして、こくりと頷いてくれました。
その仕草がとても可愛らしくて思わず抱き締めてしまいました。
私を、守りたい、大切にしたい、と日頃から兄様達がおっしゃってくれる気持ちが分かったような気がいたします。

私、頑張ります!