ロマンスター
公園に着くと、砂場で遊んでいるマイキーをみつけた。エミリーはいないけど、代わりにどういうわけだが双子がいた。なにそれ。聞いてないけど。「あ、ローラーちゃん」砂場を掘っていたマイキーがあたしに気付いて手を振ってきた。一方の双子は揃って面倒くさそうな顔をする。それはこっちの顔よ。「ローラーちゃんどうしたの?」「アンタが公園にいるって聞いてわざわざ来てやったのよ」「そうなんだ」「エミリーと遊んでるって聞いたんだけど」あたしが尋ねると、マイキーはちょっぴり悲しそうに「エミリーちゃんは用事ができて来れなくなっちゃったんだ」と言った。
「そうそう、だから僕たちが一緒に遊んでるんだよ」
「そうそう、だから一緒に遊んであげてるんだよ」
双子はそう言って、なぁ、とマイキーを見る。マイキーはうん!と笑った後「二人はついさっき公園に来てね、今遊び始めたばかりなんだよ」と言った。ついさっきってことは、じゃあまだロクに遊んでないんじゃないの。
「アンタたち嘘つくんじゃないわよ」
「嘘じゃないよ。ねぇ?」
「嘘なんて言うもんか。ねぇ?」
双子は同じことをくり返しながら「僕たちちゃんと遊んでたよな?」と両方からマイキーの肩を組む。ぎゅうぎゅうになりながら、うんまぁそうだね、と返事をするマイキーは相変わらず押しに弱い。まったく、ここじゃあまともにマイキーと遊べないわ。そう思ったあたしは、少し考えて「ねぇマイキー」と声をかけた。
「なぁに?」
「あたしね、遊びにきたんじゃなくておばさんに頼まれてきたのよ」
「え?ママに?」
なにを頼まれたの?と見上げてくるマイキーに、「今からおばあちゃんのところへ行くからマイキーを連れてきてって言われたの」と言った。「今から?」「そう。今から」「だってもう三時なのに・・・」「時間なんて関係ないわ。それともなに?おばあちゃんに会うのは朝じゃなきゃだめなの?」あたしの言葉にそんなことないよ!と慌てたマイキーは、立ちあがってスコップとバケツを片付け始めた。双子が不満そうに声を上げる。
「なんだよマイキー、もう帰っちゃうのかよ」
「まだ全然遊んでないのに」
「ごめんねふたりとも。でもおばあちゃんのところに行かなくちゃいけないから」
また明日遊ぼうと言って、マイキーは「おまたせローラちゃん」とあたしの隣に来た。双子は恨めしそうにあたしを見ている。フフン、ザマぁみろ。
「さ、行くわよ」
家に戻るべく歩き出すと、隣にきたマイキーが「ありがとね」と言った。
「? なにが」
「だって、わざわざ呼びにきてくれたんでしょう?だから、ありがとう」
にこにことあたしを見るマイキーは、心の底からあたしの言ったことを信じている。これで家に帰って嘘だとわかったらどんな顔をするのかしらんと思ったけど、マイキーは馬鹿で阿呆だから怒ったとしてもすぐに笑ってあたしを見るんだろう。あたしがどんないじわるをしたっていつもそう。お人好しなマイキー。馬鹿なマイキー。どうしてアンタは日本なんかにいるのよ。あたしの住んでるアメリカにいないのよ。でもしょうがない、おじさんの仕事の都合だもの。我慢しなくちゃ。大人の女は静かに耐えるものなのよ。
あたしがそうやってしみじみしている間、マイキーは今日のおやつはなにかということを一生懸命考えている。やっぱりマイキーって馬鹿ね。そんなところも好きよ。