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【太妹】結局、答えは誰ですか?

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一つ賭けをしようじゃないか。
私が短い話をして、其れが終ってからの問にお前が答えを出す。簡単だろ?

何を賭けたかって? 其れは秘密だぞ! お、おいおいおい! 逃げるな! 分かった、分かったから行かんといて…めぞん! お、おま、今の本気で…全く…私を誰だと思ってるんだか…。

賭けの内容は、お前が勝てば望みを一つ聞いてやる。私が勝ったなら、願いを一つ聞いて貰う。
何処が違うかだって? まあ、それは、のちのち………おい、睨むな。




とある、とある昔のこと。偉い王様と、真面目な召使がいましたとさ。
王様はとてもとても面倒くさがりで、すぐに物を散らかして国中の人を困らせていました。
あ、我が儘でもあったかも。

「仕事なんかやめやめ! 遊びに行くんじゃ、ぱっひょーーい!」


―もろ太子じゃないですか。
―おま、人の話してるのに口挟むなよ! これは、私なりのオレンジなんだ!
―アレンジです。


彼が紙を投げれば、森の木が枯れました。彼が池で遊べば、溢れた水で洪水が起きました。
あちこちで反乱が起き、家が焼かれ、たくさんの人々が道の上に倒れていきました。
しかし、彼の耳には其の嘆きも悲鳴も聞こえませんでした。

「王様! 何処です、王様!」
「あ、ころころ芋っこ!」
「そこかっ!」

遂に真面目な召使は、国の状況を知らずに遊び呆ける王に、日頃、彼の脱いだ洋服の洗濯と、異国の料理と、何匹もの犬の世話をさせられてる恨みも募り、木の上で何やら笑う彼を、たまたま持っていた弓矢で木に縫いつけました。

「お、おい芋? わ、私、なんか動けな…」
「はい、ちょっと重要なお話が」
「話をするためだけに、私は矢で射られたの…?」
「今、国民は飢えと不満で暴動を起こす寸前です!」
「スル―? 矢の事、見ない振りなのか…?」
「早急に宮に戻り、彼らへの対策を! ほら、さっさと動いて! 何で、こんなとこで妙な趣味を披露してるんです!? 穴だらけの服なんてみっともない!」
「お前……本当に嫌な奴だよ…」

王様は渋々、王宮に戻って大臣たちと話し合いました。しかし、太っちょの体を慌ただしく動かし汗だくの彼等を横目に居眠りまで。遂に大臣たちは王様を見放し、今にも暴動が起きそうな国を捨て逃げ出しました。
王宮にいた誰もが居なくなった頃、王様はようやく大きなあくびと共に体を起こしました。

「静かになったもんだな…」

丸く大きな月の光が窓から差し込み、王様はちょっと淋しそうに笑いました。
其の時、誰もいなくなった筈の廊下から固い靴の音が響いてきます。
王様はいよいよ自分の命も終わりなのかと覚悟しました。



「さて、めでたしめでたし」
「……は?」
「え、こ、此処で終わりとか駄目…?」
「……ろ…」
「え、妹子なんて」
「いいわけねえだろうが、あほんだらがあああああ!!」
「めーてるっ!!」
「グレーテルですっ!!」
「ひゃ、ひゃって…いほこ…」
「続き。どうして云わないんです」
「……芋は妹子なんだぞ。自分で、自分の行動ぐらい、分かるだろう…」

照れてるのか、怒ってるのか、目尻を紅くした太子はぷいと横を向いた。
ああ、これは本格的に拗ねている…。

続きが分からない訳ではない。太子も言ったが、否、云わずとも最初から此れは僕と太子の比喩なのだろう。
きっと、王様が太子なら。召使が僕ならば。太子は何もせずに国を傾ける筈もないし、僕は例え最後の一人になっても彼の傍に仕えている筈だ。

あの話の続きは、きっと月を眺める王様を召使が慰めにくるのだろう。

それは何の意味も無くて、王様はもしかしたら死のうとするかも知れない。
きっと考えがあるのかもしれないけど召使は王が死ぬ事に是とは云わない。
だから、どんな手段を使ってでも召使は彼を逃がそうとする。
泣いて縋るかもしれない。死なないでくれと、みっともなく叫ぶかもしれない。

どうして其処まで愚かな王様を信じたのか、どうして其処まで彼が大事なのか。
王様はきっと、初めて彼に対して困惑する。召使には馬鹿みたいに簡単な問いだと云うのに。

そんな事、言葉にするまでもない。

「分かります、よ」

ぽつり、と口から零れた言の葉に太子は首を此方に向けた。

「僕は……最後は貴方に騙されて、貴方を救えないんだ…」

何も出来ずに、彼の命が消える瞬間を指を銜えて見ているだけ。

「貴方を助けられずに」

きっと、こんな命のやりとりではなくとも。
きっと太子の思う様に道を進められて、其れが彼の為では無かった時に、僕は未熟さを恨むのだ。





「問題!」

突然、まるで叩くかの如く両手を頬に添えられて、ぐいと顔を上げられた。

「おいおい、賭けを忘れたのか妹子? これだから菌類は駄目だなあ」

ふふん、と鼻の穴をふくらませて鬱陶しい顔で笑う彼は、何と云うか地球上から滅ぼしたくなるあの黒い奴に対する感情と同じ思いを起こさせる。そうか、これが燃えたぎる様な想いと云う奴か。

「おま、なんか嫌な事考えただろ…」
「問題って何ですか。あと、そろそろ頬を全力で押さえ付けるの止めないと、三日後の犬の餌を太子の夜食に混ぜます」
「お前、そういう陰湿な事よく思いつくな!?」
「早く言え」
「…はい……じゃあさ」




「今の話で、最後に幸せだったのは王様と召使のどっち?」




思わず言葉に詰まる僕を、にやにやと楽しそうに眺める彼は僕の答えを知っているようだ。
ああ、腹が立つ。嫌な問いではないか。答えは酷く簡単過ぎて、しかし。

「……分かり、ません」

どちらを選んでも、自分の真が露見する。

「それじゃあ、私の勝ちになるけど良いのか?」
「別に。好きにすればいいじゃないですか」
「おおう、芋が拗ねた拗ねた。お前、負けず嫌いだもんなあ」
「拗ねるかボケが!!」
「じゃあ、願いを聞いて貰えるか? 別に、叶えなくても叶えてくれてもいい」
「? ………どうぞ」






「私さ、愛されてみたいんだけど」

誰に、とは言わないところが。

黙って掌を重ねてくるところが。

にこにこと僕の答を待つところが。

嫌がらせに馬の糞を投げたあんたより、仕事を投げ出し逃げるあんたより、屋根の上でせせら笑うあんたより。


今までで一番憎らしい。


「そんなの」

そんなの、さ。

「とっくに……叶ってんじゃ、ないですか」

ぶっきらぼうに答えたつもりで、出たのは蚊の鳴く様な小声。
それを彼に笑われたが、結局、どうしても顔を上げる気にはなれなかった。