アリババくんがもしも国王だったら
しきたりでは、結婚式まで相手の顔も見られないんだもの
あーあ…
私、少しマリッジブルーになっているのかしら。
アリババ王ってどんな人なのかな
素敵な人だといいなぁ……
***
今日はこの国バルバッドの国王との対面の日。
そこに嫁ぐことになった紅玉は少なからず緊張していた。
この国の国王は若くしながらも優秀で、上の兄達をさし抜いおいて王になったという。
その名を、アリババ・サルージャ
紅玉の夫となる人物である。
(無事に、お話しできるかしら…この前市場でしてもらった占いは…その)
良からぬことを思い出そうとしてやめておく。
この前ジュダル達と行った市場での占いはあまり良い結果とは言えなかったからだ。
所詮占いは占い。当たるも八卦、当たらぬも八卦…
しかしこの胸騒ぎは何なんだろうか。
どうせなら、顔もなかなかの人が良いと思うのは少々我がままなのかもしれないが
そう思いながら、対面の時を今か今かと待つ紅玉であったが…
(今のうちに、ちょっとだけ…)
***
「このバルバッドで、これから…」
紅玉がこのバルバッドの市場へ行くのはこれで二度目。
いくら嫌がっていても定めというものは来てしまうもの。
せめて最後にこの自由な時間を堪能したいと思い、ここに来たわけだが、
今の国王、アリババに代わってからは無くなったのでが、兄たちが治めていた時代は些か治安が悪く、今もまだ貴族たちを襲うスラムの国民は後を絶えない。
浮かれ切っている姫は、後ろから迫る陰など露知らず。
(、殺気)
普段武術に長けている紅玉でも、
油断していたためいきなりの刺客に反応しきれなかった。
(、避けきれない!)
「おいお前ら。何してんだ!」
(、)
「何なんだよお前っ!!」
「あ、あにき!こいつ強いっす!」
「ちっ…ここは一旦引くぞ!覚えてろよ!」
気づけばそこには敵などおらず、立っているのは一人の少年だけ。
いや、青年…といったほうが良いのだろうか。
「あ…、ありがと」
「ああ…大丈夫か?怪我とか」
ハッと気づけばその少年の手には紅玉の手が握られていて、
(…!)
「あのっ!ありがとうもう大丈夫よ!っていつまで握ってんのよ!!」
「え、ああ…わりぃ…」
ふと上を向けば、少年の顔整った顔、
(あ…)
さらさらの金髪に同じ色、より少し濃いめの目。
全体的に整った奇麗な顔がそこにはあった。
(この人、)
(かっこいい・・・)
「おい、だいじょうぶ、」
「あ、ち、近いわよ顔がっ!!私を誰だと思ってるのよ!!煌帝国の姫君よ、…あ、言っちゃった」
(煌帝国…?それってたしか…)
「へぇ…」
「何よ」
「いや、別になんでもねーよ」
(なんなのこいつ!顔は良いけど、なんか癪に障る…!)
気づけば時間というものは早く、既に日が暮れかけていた。
「あ、私そろそろ行かないと…」
「そうなのか?送っていくよ、家どこ?」
「い!?い、良いわよそそそんなのあんたにしてもらわなくても!!」
「ふーん…まあいいや、じゃあな、紅玉」
(、今、名前…!)
「ちょっと…!待ちなさ…」
するとそこに強い風が一吹き。
気づけば少年は消えていた。
(いない…)
(あの人はいったい、)
紅玉がその存在に気づくのは、時間の問題で。
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作品名:アリババくんがもしも国王だったら 作家名:温檸檬