白緑
10. 明日はきっと青空だから
見上げた肩越しに、星空を見た。あぁそう言えば、明日から晴れるとナミさんが言っていたかもしれない。雲に隠されていない空を見たら、気分も晴れるだろう。いや、もう晴れているけれど。
「おい」
「あ?」
「重いんだよてめェ」
言ったら笑って我慢しろと。何日おれが我慢したと思ってんだ、そうゾロは返す。我慢してたのがてめェだけだと思ってんのか?思いもかけない言葉、止まったゾロの表情は暗くて読めない。
「わかんねェヤツだな」
「おれはおまえが世界一になるまでって腹ァ括ってたけどな」
「待つ気だったのか?」
「どーだろう」
「おい、」
「わかんねェよ、‥‥痺れが切れてたかも知れねェ」
多分ダメだな、辛抱無くてよ、あのままだったらきっと壊れてた、珍しく本音を口に出せるのは、ゾロの顔が見えていないから。しかし、唇が動くのはわかった。声もすぐ傍で聞こえる。
「てめェが壊れる前に、おれがどうにかしてた」
そんな言葉が嬉しくて、でも笑って答えるしかない。
月の明かりで徐々に顔が見えてきたから。
「結局てめェも、辛抱ねェんだな」
「言ったじゃねェか、さっき」
「待てねェってな」
「あァ、‥‥待てねェよ」
言葉は必要のないものとなった。喰いつかれた唇が本音を濁す結果になろうとも、それが外に出なかっただけで、内での囁きは聞こえている。
互いにそれをわかっているから、もう言葉はいらない。
おまえが世界一になるプロセスにおれが必要なら、
おまえが必要とする限り傍にいよう。
腕の中にいよう。
飯も作ってやる、喧嘩もしてやる、喰われてやる。
だから、絶対死ぬんじゃねェぞ。
ああ、なんておまえ想いなんだ、おれは。
覚悟決めろよ、腹ァ括れよ、なあ、
その日が来るまで、おれはおまえと背中合わせで闘うから。