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お題:「病院」「カレンダー」「恋愛」を使った不思議な話


 ――――早く行かなければ……。

 何かに急かされるような気持ちで、綱吉は前へ前へと足を進める。
 急がなきゃ。けれど、どこへ?
 そう疑問を抱いた瞬間、綱吉の目の前に病院が現れた。
 そうだ。オレはここに向かっていたんだ。と思う。
 けれど、どうして病院に?
 そう思ったのと同時に、脳裏に浮かんだのは雲雀恭弥、その人だった。
 あんなに強い人なのに、雲雀と病院は綱吉の中で容易に結びつく。
 それはきっと、随分昔、入院先で同室になったときの出来事が、綱吉の中に深く根を張っているせいだろう。
「忘れようったって、そう簡単には無理だよね」
 呟いて、くすりと笑う。
 あの人のことを考えてこんな風に笑えるようになったのが、少し不思議だ。
 でも、今は笑っている場合ではない。
 ここに雲雀がいるということは、きっと何かよくないことがあの人に起きたのだ。だから自分はこんなに慌ててここまで来たのだろう。
 綱吉は入り口の自動ドアを潜り、受付へと向かう。受付には、どこか懐かしいような木製の万年カレンダーが置いてあった。
 その日付に、綱吉は首を傾げた。
 何だろう? 大切な日だった気がするのに。
 頭の隅に浮かんだ引っ掛かり。綱吉がそれを深く考えるより先に、中から白衣を着た男が顔を出した。
「何の用だ?」
「雲雀さんの病室は」
 口にしてから、それがリボーンだと気づいて、綱吉はぱちりと瞬く。
「どうしてお前が?」
 リボーンは「それはこっちの台詞だぞ、ダメツナが」と、いつもの調子で罵って劇鉄を起こした。
「夢の時間はおしまいだ」

 空気が弾ける音がして、綱吉はびくりと体を揺らした。

「目が覚めた?」
 静かな声。後頭部がじんと痛む。
 叩かれたのだろう。犯人はきっとこの人だ。
「雲雀さん…」
「まだ終わってないらしいね」
 言われて視線を落とすと、そこにはよだれの跡がついた書類があった。どうやら夢を見ていたようだ。
 ――――5月5日。
 夢の中のあの日付。それがこの、自分と恋愛関係にある人の誕生日だと気づく。
 そして、夢だけでなく現実でも今日が…。
「これでラストです」
 手にした印鑑をぽんと捺したら、それが休暇の始まる合図だった。
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