@Twitter.03/骸ツナ
「君が寒そうだから」
そう言って、骸が綱吉の首にマフラーをぐるりと巻いた。夜の闇に骸の白い襟元が浮かんで見える。
「お前が寒いだろ?」
「いいえ? 僕は寒さには強いので」
骸はマフラーを返そうとした綱吉にかぶりをふると、波打ち際を歩き出した。
「今年一番の冷え込みだって」
「今年なんて、まだ始まったばかりじゃないですか」
綱吉の言葉を骸が鼻で笑う。吐く息が白い。打ち寄せる波が凍らないのが不思議なくらいだった。
深夜の海。
静けさの中に波の音と、自分たちの足音だけが響いている。
その音を聞きながら綱吉は、昔、やはり骸と二人で海を見たときのことを思い出した。
もう、どれくらい前だろう?
あのときの海は、深淵のように黒く、今にも何もかもを飲み込みそうに見えた。
なのに……今二人で見ている海は、あのときとはまるで違う。真っ黒なのは同じはずなのに。
あの夜の自分は、どこまでも切羽詰って、自分から逃げ出したくて、そんな気持ちを抑えられずに海まで歩いた。
多分、海が自分を飲み込もうとしていたのではなかったのだろう。
自分が海に、飲み込んで欲しいと思っていたのだ。
ずっと長く海を見つめて、踵を返そうとしたときに、ようやく骸が着いてきていたことに気付いたのだ。
――――おや? 帰るんですか?
そう言った骸に、なんと答えたのかは覚えていない。
けれど今、海がこんな風に穏やかなのは、きっと……。
「骸っ」
綱吉は、ぐいと骸の腕を引き、屈ませた彼の耳に両手を当てた。
「ほら、こんなに冷たくなってるじゃん」
寒くないなんて言っても騙されないと、綱吉は骸を甘く睨む。
「本当に寒くないんですよ」
けれど、骸は再度そう言って綱吉の頬に両手を当てた。
「……君の唇のほうがよっぽど冷たいです」
冬の風にさらされた唇が、じんとした。
作品名:@Twitter.03/骸ツナ 作家名:|ω・)