二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

一陣の風のように

INDEX|1ページ/1ページ|

 
「そろそろ返事を聞かせてくれない?」

突如ふらりと姿を現した臨也は、登場と同様に唐突に訊いてきた。

「返事って、何のですか?」

最早前置きが長かろうと無かろうと臨也の話しかけに慣れてきた帝人は嘆息一つに止めた。
どんな登場をしようと、どのみち相手の言動に振り回されるのだから、今くらいは平静で努めようという心構えだ。
切れ長の目が覗き込んでくると、流石に帝人は仰け反った。

「本気で言ってる? それは酷いなぁ」
「そう言われましても。何の問いなのか僕には・・・」
「俺への愛の返事だよ。決まってるじゃないか」

愛という言葉にどきっとした。どうしてこの男が言うととても陳腐な、でもさらりと口にしても似合う言葉になるのだろう。
帝人は心臓を馴らしながら、平常心を心がけた。

「愛の返事って、臨也さん何も言ってないじゃないですか」
「言ってない?」
「あの、ほら、愛した分だけ愛されなきゃとかは言ってましたけど、他は別に・・・」

帝人が言葉を濁すと、ああ! と臨也は大仰に天を仰いだ。

「そうか! そうだったね! じゃあ、好きだよ帝人君」
「そんな付け足しで言われても」
「え、普通はこういうもんじゃないの? ほら、俺って草食男子だし?」
「自分から強引にキスする人は肉食だと思いますけど」
「そう、キスしたって事は好きって事だよ。言葉に出来ない分行動に移しただけだ。告白なんてそれで十分じゃないかい?」
「臨也さんがすると冗談にしか思えないので告白とはちょっと・・・」

そもそも最初の出会いからして、臨也の言動は演技がかっていた。たとえ話を持ち出し、口だけではなく行動にも表す。そんな男が冗談でキスするなんて、あり得すぎて本気に受け取れと言われても困る。天敵とされるあの平和島静雄にさえしていても不思議に思わないだろう。
帝人が疑わしげな視線を送れば、臨也は軽く肩を竦めた。
そして徐に帝人の前に回り込み、片膝をついて帝人の手を取った。

「竜ヶ峰帝人君。俺、折原臨也は君に交際を申し込む。返事をきかせてくれるかな?」

芝居がかるにもここまで来れば最早衆人は観客だ。
何事かと立ち止まる人が増えてきた。このままでは人垣が出来そうだと思った帝人は慌てた。

「わ、分かりました! 分かりましたから行きましょう!!」

取られていた手を返してそのまま臨也の手を掴むと、急いでその場を離れた。
目的地はないが、ひとまず人気のない場所と思いただ走る。
ビルとビルの隙間の路地裏に入り込むと漸く落ち着けた。いや、落ち着いたのは一瞬だけで、

「これって愛の逃避行ってヤツ? いいね、恋人と手に手を取ってというのはロミオとジュリエットでもなかなかない。情熱的という点で嵐が丘かな?」

臨也が握ったままの帝人の手を自分の胸に重ねて陶酔に浸ると、帝人の狼狽は再び最高潮に達した。

「ち、違います! 単に目立っていたので・・・」

あのままでは衆人の知るところになり、変な目の付けられ方をされるかもしれないと思っての咄嗟の行動だった。
しかし臨也は取り合わない。

「返事ももらえた事だし、俺はもう行くよ」
「え?」
「分かったって、了承の意味だよね? ふふ、これで俺たちはちゃんと段階を踏んだ恋人同士だ」
「えええ!?」

分かったと言ったのは、告白をしてくれたのが分かったという意味だったのだが、臨也は自分の都合の良いように解釈をした。
おまけに帝人の弁解を聞かずに、登場と同じく颯爽と唐突に退場していった。
満足げな鼻歌を流しながら。

「どうしよう・・・」

帝人は途方に暮れるしかなかった。
作品名:一陣の風のように 作家名:みや