二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
ちょこ冷凍
ちょこ冷凍
novelistID. 18716
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

Devil's tactics

INDEX|1ページ/1ページ|

 

 水谷が生クリームが好き、という事実を栄口が知ったのは三橋の誕生会の時だっただろうか。
 二人が付き合い出してからも水谷はコンビニに寄ればデザートコーナー、買い物に行けばクレープ屋、と事ある毎に生クリームを補給していた。
 今、栄口の目の前に座る水谷はチョコレートサンデーにするかフルーツサンデーにするかで迷っている。
「オレ、マンゴーはあんまり得意じゃないんだけどフルーツサンデーに乗っているミルクプリンは食べたいんだよねー」
 メニューの写真を人差し指でさする水谷に、栄口はチョコレートサンデーにもプリンが乗っている事を指摘してみたが、それはチョコプリンだから! と力一杯否定する。
 水谷は優柔不断な少年だった。
 好き嫌いははっきりしているが、二択では悩む。ひたすら悩む。
 悩んで悩んでようやく決めてからも、やっぱりあっちの方が良かったかなぁといつまでもウダウダ言うところは水谷の欠点だと、栄口は密かに思っていた。
「でもチョコレートサンデーのブラウニーも捨て難いし……。ねー、栄口はもう決まった?」
 考え疲れた様子の水谷は、テーブルに上半身を伏せながら上目遣いで見上げ、真っ直ぐ伸ばした両手で栄口の手を取り絡める。
 栄口はこういう時の対処法を知っていた。水谷の選択肢を無くしてやればいい。
 二人で半分こ、水谷の大好きなフレーズだ。
 やんわりと水谷の手から逃れ、オレはチョコレートサンデーにする、と栄口が言おうとした瞬間、ご注文はお決まりですかー? と高い声が二人の頭上から降ってきた。
「あ、水谷センパイじゃないですかー!」
 ハンディターミナルをエプロンのポケットから取り出しながら、ウエイトレスが一段高い声を出す。
 テーブルの上にだらしなく伸ばした体をのろのろと起こした水谷は、おー! 何、ここでバイトしてんの? と愛想良く返した。
「そうなんですよーって、この前言ったじゃないですか!」
「そうだっけー? あ! ねーねー、チョコレートサンデーのこれ、ミルクプリンに変えてもらえないかなー?」
「えー? ナイショですよー?」
「ついでに生クリームも増量して!」
「もー。ワガママ言い過ぎ!」
 目の前で繰り広げられている楽しげな掛け合いを見ていたくなくて、栄口はぼんやりと手元のメニューを眺める。
 水谷が甘えた笑顔を振り撒くのが心底嫌だった。出来ることなら目を閉じ、耳を塞いでしまいたい。いっそ、この場から立ち去ってしまいたい。
 俯き加減になっていた視線の先ににゅっと手が伸びてきて、意識を別のところにやっていた栄口が驚いて顔を上げるとビックリし過ぎ、と水谷が笑う。
「で、栄口は決まったの?」
 笑ったままの水谷に注文を促され、栄口は小さな声でチーズケーキ、と呟いた。

「さっきの子、中学からの後輩でさー」
 店を出た途端、水谷が弁解するように話し始める。水谷は空気が読めないと評される事もあったが、末っ子気質なのか他人の機微に鋭く反応するのを栄口は知っていた。
 嫉妬心に気付かれたであろう事が居た堪れなくて、これ以上気を回されたくもなくて、なるべく穏やかな表情を浮かべて水谷の方を向く。
「卒業式の後に、ファンでした! って言われたけど、それだけ。本当に何にもなかったよ」
「まじかー。オレもそんないい思いしたかったなー!」
 栄口は殊更明るく言い、自嘲も込めて営業用と呼んでいる笑顔をとどめに見せてやれば、水谷がヘラリと笑い返してきた。
 はい、一丁上がり。
 妙な所もあるけど、基本的には単純な奴で助かるよ、と栄口は心の中で呟いた。


 水谷がキスを仕掛けると、試験前なんだぞ、と一応拒絶のポーズを見せた栄口だったが、逃げも突き飛ばしもせずに水谷の腕の中に収まった。
 その事に気を良くした水谷は、ゆっくり、丁寧に栄口に触れていく。
 どこもかしこもいつもより反応が良い栄口に、余裕がなくなると積極的になるっていつになったら気付くんだろうね、という所までを飲み込んだ水谷は、さかえぐち、可愛い、とだけ告げてベッドに引き上げた。
 別にチョコプリンでも良かったし、あの店であの子がバイトしてるのも覚えてた。
 心を乱すような真似してごめんな。
 でもこうでもしないと拒否られただろうし、栄口は知らないだろうけど、一生懸命平静を装おうとしている栄口の顔を思い出すだけで、オレ、ヌケるんだよ。
「……さかえぐち、もしかしてオレって変態?」
 栄口が荒く息を吐くのを耳にしながら数時間前の出来事を回想していた水谷は、とんだ自分の性癖に気付かされ、慌てて顔を上げ栄口に問いかける。
 咥えられていたものが勢い良く腹に当たり、交差させた自分の両腕で隠している顔を痛みで歪めた栄口は知らない、と吐き捨てた。
「変態じゃない?」
 マウントポジションから水谷がその腕を無理矢理開くと、顔を背けた栄口は噛み締めていた唇をそっと戻す。その姿にすら反応するなんて、やっぱり変態かもしれない。
 再度悩み出した水谷は、挿れてから焦らした方が素直に答えてくれるかな、と露わになった栄口の細い首筋に顔を埋めた。
作品名:Devil's tactics 作家名:ちょこ冷凍