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君ばかり見てる。

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目の前に座る少年の背中。

講師の話を退屈そうに聞いている。
彼が大人しくこんな講演会に参加している事自体が珍しいことだ。
とても、とても良いものがみられた。
獄寺の気まぐれに多分に感謝し、観察する。

かくり、かくりと左に傾いていく。
傾いてはびくりとはね、元の位置へ戻っていく。
その怠惰な姿が非常に可愛らしい。

ふにゃりと曲げた背中は少し猫背で。
背骨が薄いシャツをすかして見える。
うっかり、手を上してそのラインを撫でたくなる。
ぐっと堪えて、膝の上で拳を握り締めた。

少年は、曲げたままだった背を伸ばすように反らした。
しなやかなそれは色っぽくて、意思が砕けそうだ。

俯いたときにちらりと見える白い項が。
髪を弄る手が、細く筋張った指が。
ちらりとみえた耳朶が。
とてもおいしそうだった。

こんな場所で触れば怒るだろうな。
きっと顔を真っ赤にさせて怒鳴り散らすんだ。

可愛いな。
可愛い。
見たいなあ、でも。

周りに迷惑をかけるわけにはいかない。

早く終われ。
早く、彼の背骨を撫でさせてくれ。
それまで伸びそうになる手を膝に括り付けて耐える。
大人しく、彼の可愛らしい行動を観察していよう。

作品名:君ばかり見てる。 作家名:吾雀