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課外授業

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「以上、分かったかしら?」

 言われて、赤毛の少年は思い切りよく首を左右に振った。

「ぜーんぜん」

 ぴくり、と栗色の髪の少女の眉が吊り上がる。

「ちょっと、あなたそれがものを教わろうって人の態度なの!?」
「教わる方のレベルに合わせるのが立派なセンセイってもんだろ! 君の言い方は優しさが足りない!」

 そう反論されて、ハーマイオニーの眉が益々吊り上がる。

「なんですって! じゃあこう言えば満足かしら? 『まぁロニィ坊やったら、こんな簡単な問題の解き方も分からないなんて、お馬鹿さんね』とでも!?」
「な、バカにするなよ、ハーマイオニー!」

 ロンは負けず劣らすムキになって言い返すと、そうだな、と重々しい声で言った。

「こう、せめて隣に並んで座って、ひとつずつ分からないところを示しながら教えてくれるもんじゃないのかよ!」
「あのね、家庭教師じゃないんですからね!」

 叫び返しながら、ハーマイオニーはロンの隣にどすんという音を立てて腰を下ろした。

「で、どこ」
「ここ」

 赤毛の少年の指差した個所に、ハーマイオニーの表情が更に険しくなる。

「ここ、もう三回も教えたじゃない! なんでできないのよ!」
「四回目を快く教えるのが教師だ!」
「教師だって教え子を選ぶわよ!」
「それじゃスネイプと変わらないじゃないか!」
「言ったわね!」

 どの口よ、と口元を抓られて、ロンは情けない悲鳴を上げた。

「痛い!」
「そうね、この痛みを覚えていれば答えも忘れないでしょ。さ、行くわよ四回目!」

 きりきりついてきなさい、と羽根ペンを手にロンの手元を覗き込んだハーマイオニーは、一瞬絶句して少年の名前を呼んだ。

「ロン」
「なに」
「あなた、もう一つ前の所から間違ってるじゃない! 解けるわけがないでしょ、こんなもの!」
「え、嘘」

 言われたロンは羊皮紙を覗き込んで自分の書いた解答を何度か読み返し、首を傾げる。

「でも、これってこの間ハーマイオニーに言われた通りにした筈なんだけど」

 そのロンの台詞に、今度こそハーマイオニーが席を立つ。

「なによ、私が間違って教えたとでも言いたいのかしら、ロン・ウィーズリー!」
「違う違う、ほら何、やっぱり正しい教え方で教えてくれたら間違いにも気付くっていうか」
「もう、スネイプにもトレロニーにもこうやって隣に座って教えて貰えばいいんだわ!」
「それはちょっと勘弁して欲しい……」

 何のかんのと言い合いながら、仲良く隣同士並んで授業を続行する先生と生徒の姿に、グリフィンドール談話室の他の面々は深い溜息と共に目を逸らし、周囲からの視線に居たたまれなくなった黒髪で額に傷のある英雄が結局最後に辞書片手に果敢に二人の間に特攻を試みる羽目に陥ったのだった。



おしまい
作品名:課外授業 作家名:とりせ