フタリ
最も、その内面にある強さや誇り高さにはなかなか目を留めて貰えることは少なかったが。
その高い壁に今また一人の青年が果敢なアタックを試みていた。
「俺さ、ちゃんとした教育も受けてないけど」
そんな風にジュドーはあっけらかんと切り出した。嫌味も卑屈なところも何もないその言葉に、カミーユはひどく好感を持った。
「受けてないけど、というかすげぇバカなんだけどさ。カミーユさんが賢いってのも知ってるけど、でも」
ジュドーはそこで言葉を切り、カミーユを真っ直ぐエメラルドの瞳で見つめる。
「でも、俺とカミーユさんはここんとこが同じだから」
言いながら、ひとさしゆびで己の胸を指した。それだけで、カミーユはばくんと自分の心臓もひとつ波打ったような気分になる。
「だから、きっと、巧く行くよ」
だから一緒に暮らそうよ、と言われて、カミーユは白旗を揚げた。
だって、笑われそうだがジュドーの顔を見ただけで、世の中なんでも巧く行くような気がしたのだ。
でも、それを認めるのは悔しかったので、なにか言い返してやろうと試みる。
「家賃はお前も稼ぐんだろうな?」
「あ、俺働くの苦にならないから」
「……本当に巧く行くと思っているのか?」
言ってしまった後で我ながら意地が悪いと思ったが、性分だから、一緒にいるならこれにも慣れて貰わないと。綺麗なバラには棘がある、美青年には大抵の所毒があるのだ。
ジュドーは大きく目を瞬いた後、にっこりと微笑む。
「俺、学はないけど、大切な判断は外したこと、ないんだよね」
野生の勘がそう告げてるから、ダイジョーブ!そうどんと胸を叩くジュドーに、何が大丈夫なんだか根拠を言えよと苦笑しながら、カミーユは軽く溜息をついて空を見上げた。
———もう、ひとりには飽きたし、ふたりになることを試してみても、いいか。
そう考えたタイミングで、丁度ジュドーからもう一度言葉がかかる。
「あ、じゃあ、俺今日誕生日だからさ、プレゼントってことでお試し二人暮らしってどう?」
「お試しってなんだ、お試しって!」
思わずツッコミを入れながら、カミーユは己の敗北を潔く認め、それでも精一杯の反論をした。
「じゃ、来月の俺の誕生日までの、お試し、な」
無論、ジュドーから猛然と抗議の声があがったのは言うまでもない。