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【ノマカプAPH】泣き場所【中越】

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月の見えない夜だった。
辺りはシンと静まり返り、ただひたすら自分の呼吸の音が聞こえない夜、いつもはすんなりと寝入るはずなのに、その日はなかなか寝付くことが出来なかった。
今思い返してみると、もしかしたらその後の訪問者を予感していたのかもしれない。

その訪問者は、音を立てないようそっと私の家へとやってきた。
もしもその気配が知らない者のであったならば、私は部屋の角に置いてある櫂をそっと取りに行ったのだろう。しかしその気配や、隠しきれない歩き方の癖で、訪問者が“彼”であることを確信していたため、私はじっとベッドの中で待ち続けた。

やがてそのかすかな足音は、私の寝室の前で止まった。
そして彼はそっとドアを開け、そこで私は「その気配で起きた」ことを装い、飛び起きる。
もう長い付き合いの彼には、私がとっくに気配に気付き起きていたことなど丸分かりかもしれない。
しかし私は、訪問者が誰であったか知らなかったかのように、言葉をつむぐ。

「なんだ…アンタだったの。何よこんな時間に…。」

しかし彼はその問いには答えず、ベッドに腰かけた私の肩をそっと押した。
それはほんのかすかな力だったが、私は何の抵抗もせずゆっくりと倒れ、そして彼は私の首筋に鼻を寄せた。
しかしその後何も起こることがなく、再び静けさが戻る。胸の上にかすかな温かさを感じ、私のまぶたがゆっくりと閉じかけた瞬間、耳の近くでひっそりと泣く声が聞こえだす。
そっと右手を伸ばし、彼の背中をゆっくりとさすると泣き言は更に首筋へと近付き、こもった音となった。

「大丈夫よ、ここは誰も来ないから。」
「うるさいある。黙ってこのままでいるよろし。」

彼の吐いた息が首筋をくすぐり、我慢出来ずに噴き出すと、彼はすねたような声を出した。

世界中に兄貴面をし、自分よりも年上の者が次々と消えていく世の中を生き抜いてきた彼には、もう弱音を吐き出す場所はなかった。
最初はとてもおどろいたが、指が片手分で足りる頃には慣れた。
どうして自分の元へやってくるかなど考えても無駄だと分かったのは、彼の突然の訪問が十を超えたあたりからだった。

どうせこの部屋には誰も入ってこない。
万が一はたから見れば少々あやしいこの体勢を見られたところで、面白半分で言いふらす者もそういないだろう。

「また美味しいもの持ってこさせなさいよ。」
「分かってるある…。」

彼の泣き声が少しずつおさまっていくのを聞きながら、私の瞼はゆっくりと閉じていった。


【終】



──────────

にーにの泣ける場所は越っちゃんの胸の中だけ!
…とかだったらいいのに、って妄想。

タイトルセンスが来い。