牛女
昨年はミルキーウェイについてのギリシア神話の蘊蓄を語ってくれた、その続きらしい。
ひとくさり恋人同士が離れ離れになって、年に一度だけ白鳥の渡す橋で天の川を渡るのだという物語を聞いて。
一年間真面目に働いたらそのご褒美に天の川を渡してくれるんだそうだ。ワーオ。
「そんな可哀相な伝説があるんだ…。」
一年に一回しか会えないなんて、好きあってる恋人同士なのにつまんないなぁと僕は思った。
「一年に一度しか会わないから、ずっと一緒に居られるんじゃないの?」
ところがハリーはそう言った。彼曰くあんまり毎日一緒にいない方が飽きないんだそうだ。
だからって別の寮のマルフォイをあんなに追い回すことないと思うけど、と呟くとだから織り姫には燃えるんだよ親友、とさっくり返された。…ああそう。変な奴。
ドラコ・マルフォイじゃないなら不憫だと思ってやるけれどもマルフォイなのでまぁいいやと思ってしまう辺り僕も結構性格悪いだろうか。
「違うわ、一年に一度でいいっていう、究極の理想と信頼の愛情の物語よ。」
ハーマイオニーが僕達の意見に憤慨したようにそう締めくくった。
こんなに感じ方が違うのに一緒にいるなんて面白いなぁと僕が思っていると、先にそれはハリーが言ってしまったので。
「何にしても君が結構ロマンチストなのが一番意外だよ、僕は。」
とハーマイオニーに言ってやると、あなただけはいつだって一言多いのよ、と拳固で小突かれる羽目になってしまった。
ぷんすか膨れるハーマイオニーに、なんでかなぁとハリーに聞いたら。
「…一年ぐらい離れてみたら分かるんじゃないの、君達はいっそ。」
と呆れかえったように言われてしまった。