規格外品
がこん、と鈍い音がしてぱらぱらと埃が落ちる。安普請だろこの家。
くそ、くそう、くそう、クソッタレ、ちきしょう、FuXk Off, Bitch!!
ありとあらゆる罵詈雑言を知っている限りの言語と単語で並べ立てながら落ち着こうとベッドに座り込む。
頭を抱えて収まりの悪い髪の毛をかき乱した。
ああ、いい気味だクソッタレ。
普段は温厚とは言えないまでも自制を多少は効かせようとしているのだ、これでも。
これでも!!
ダドリーがアホのゾウアザラシみたいな面でプレッツェルを貪り食うばかりでも!!
「父さんと母さんの悪口を言う奴は許さない。」
視界の隅に写真立てが入る。
セピア色に色褪せた写真の中では、ハリーの父と母が幸せそうにじゃれ合っている。
踊ったり、キスしたり。
ハリーは一年生の時にハグリッドから貰った写真の中でもこれが一番好きだった。
ハンサムな父さん、綺麗な母さん。
僕を愛して育ててくれるはずだった父さんと母さん。
ハリーは立ち上がって部屋の隅に立てかけてあったトランクを開け、まずその写真を内側の一番大事なものを仕舞う小さなポケットに入れた。
次いで教科書や着替えなんかを雑多に詰め込み始める。
腹が立って仕方がなかったからなんかベッドサイドのランプとかまで入れちゃった気もするけれど知るものか。
ガタンゴトンガコンと大きな音をさせながらハリーは今年も家を出る。
バーノンおじさんとペチュニアおばさんと喧嘩して。
おばさん、おばさんは母さんの姉妹なんだろう。腹が立たないのかあんなに言われて。
そのこと自体が腹が立って仕方がない。
収まらない。ハリーというピースは何時だってこの場所には収まらない。
ダドリー家というジグゾーパズルにも、多分マグル界っていうパズルにも当てはまる場所はないんだろう。
ひょっとしたら、ホグワーツもこれで退学かもしれない。
親友のハーマイオニーに言わせれば死んだ方がマシ、って状況だ。
———僕の家は何処にある?
僕の居場所は、何処だ。
呟きながら、ハリーは宵闇の郊外の町を歩き続けた。
迷子の魔法使いを迎えに来てくれる、キチガイみたいなバスが来るまで。