帰省
大きなトランクを引いて、栗色の髪の毛の少女は微笑む。
「うん、また来年ね」
ロンが手を振るのに、ハーマイオニーは僅かに首を傾げる。
「ハリーは?」
「気を利かせるって。ハーマイオニーよろしくねっていっといて…って言ってたけど、アレは多分お姫様の所」
「ああ、そう。来年も受難ね、マルフォイ」
「アレはアレで好きでいじられてんじゃないのか?本当に嫌なら家に帰ればりゃいいわけだし、あいつこそ」
「違いないわ」
顔を顰めつつ鋭いことを言うロンに、ハーマイオニーも苦笑する。
その後で、改めてトランクを持ち直した。
「じゃ、本当に、また来年」
「うん」
歩き出した少女が、しかしながら暫くして振り返る。
「そのうちに、帰るんじゃなくて行ってきます、って言えることを期待しているわ」
それだけ言うと、ぱっと走り出して帰省の人波の集う馬車の所まで走って行ってしまった。
「なんだ?家っていうのはそもそも還る場所…?」
さっぱりハーマイオニーの言葉の意味を理解せずに首を傾げる赤毛の少年が、その言葉の意味をうっかり黒髪の親友に聞いてしまってえらいことになるのは、年が変わってからの、まだ来年の話である。