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ゆるぎないものひとつ

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青い髪の毛のニュータイプの少年と強化人間の少女が並んで腰掛けて話をしているのは、傍目にはとても微笑ましい光景だった。そう、少年が今日がなんの日かを少女に教えるまでは。

「今日はエイプリルフールっていってね、罪のない嘘ならついて構わないっていう日なんだよ」

 過去の記憶が一切ないという強化人間の少女に、ちょっとした知識を教えるのは、カミーユの楽しみの一つであった。それに、どこか子供のようなフォウ・ムラサメの、無邪気にも思える「どうして?」「なにが?」という質問を聞いていちいち答えることも、一人っ子だった少年の保護欲のようなものを満足させていたのだった。

 しかし、本日ばかりはどうも勝手が違っていた。

「どうして? だって、カミーユはこの間、嘘はいけないことだって言っただろう? なのに、今日はいいのか?」
「あ、いや、そりゃあ、嘘はいけないことだけど、でも、今日は少しだけ、他の人で遊んでも構わないんだよ」

 カミーユの説明が、フォウにはあまり気に食わなかったらしかった。

「それじゃあ、私がカミーユに嘘をついても、今日だけはカミーユは怒らないのか? 難しいな」
「そうだね、でもまぁ、無理に嘘をつくこともないんだから」
「でも、面白いな。本当にどうしてこんな日ができたんだ?」
「ええっと……」

 カミーユは再び言葉に詰まって視線を泳がせた。エイプリル・フールの由来なぞ、学校ですら聞いたことがない。

「俺は知らないんだ。クワトロ大尉にでも聞いてみたらどうかな?」

 しかし、その少年の提案を少女は一蹴する。

「だって、今日は嘘をついてもいい日なんだろう? クワトロ大尉の言うことが本当じゃないかもしれないじゃないか。カミーユなら私に嘘なんてつかないだろう?」
「ええっと……」
「まさか、今言ったことは全部嘘?」
「違うよ、そんなことはない!」

 さて、知らないと正直に言って信じて貰えるだろうかと思って返答に窮するカミーユの視界で、廊下の向こうからひょこっとアムロが姿を現したが、カミーユがフォウになにやら詰め寄られている光景を目にした瞬間、ぎょっとしたようにそのままもと来た道を引き返してしまった。

 そんな、と愕然としながらカミーユが心の中でアムロを詰る。

(ちょ、アムロさん、逃げましたね?! 部下を見捨てるんですか!)
(……フォウと仲良くな、カミーユ)
(アムロさーーーんっ!)

 この薄情者ー!というカミーユの嘆きは、当然ながらアムロにはさっくり無視されたようであった。

 勿論、アムロだけでなく、アムロやクワトロを筆頭とするロンド・ベルの誇るニュータイプ部隊がその才能を遺憾なく発揮して(こんな時だけなどと言ってはいけない)、カミーユの困惑した思念を受け止めて、その廊下には一切近寄らないようにしている、などという麗しい友情に満ちた行動を取っていることなど、青い髪の少年にはまだ知る由もなかった。

 後日、妙なことにやたらと博識なクワトロにエイプリルフールの由来を聞きだしたカミーユはなんとか無事に面目を保ったようだが、この日以降、カミーユが少女との会話の内容に多少慎重になったことはいうまでもない。
作品名:ゆるぎないものひとつ 作家名:とりせ