煌く、
嗚呼、獅子と鷹が夢を見失ったのは、赤い天鵝絨が空を思ったせい。
柔らかな魅力に抗えず、深みに嵌まって抜け出せず、
そしてそれを罪だと自覚していないせい。
傷を負った獅子は地を這って、鷹は片目を夜の死者へ売り渡してしまった。
全てお前が導いた。全てお前が崩していった。
放浪の王の民は何処へ。
煙水晶の境界越しに、お前は何を見てきた?
苦しむ民に、お前が与えたのは一方的な偽善だった。
城を離れていかないで!そう叫ぶ声をお前はわざと見捨てたのだ。
砦の上でガーゴイールが嘶く。
さようなら。どうか無事で。我が国の恨み晴らしたまえ。
さようなら。我等が偉大な鬼道有人。
ほら、風車が回るよ。
民を括りつけ、叫喚を纏いながら風車が回るよ。
夜の死者の腐臭を嗅ぎながら、民は叫ぶ。
王を返せ。守護者を返せ。明星を切り裂く氷色の、鋭い槍を返せ。
国にはもう誰も帰らぬ。荒れ果て、残るは白と黒の煉瓦道。
我らの、希望を。我らの。我らの。
光弾の射手にガーゴイールは撃ち落された。
墜落する獣の叫びで墓場から霜を纏った土人形が目を覚ます。
射手は歌う。さぁこちらへおいで、甘いお菓子をあげよう。
暖かいベッドも。愛してやろう。
お前達の王のくれなかった、ミルクの薫る愛をたっぷりと。
ガーゴイールと土人形は涙する。
王は帰らない。
敬愛はやがて歪み、憎しみへと変わるだろう。
それはなんら不思議ではない。至って普通のことなのだ。
それを責めることは誰にも出来やしない。
そしてまた、王が安寧の夢へ身を委ね、帰らぬ人となったことも、
誰も責めることは出来ないのだ。
全ては必然であり、変える事の出来なかった運命。
願わくば、彼らにもう一度。
王の帰還を。守護者の復活を。鋭槍の輝きを。
待ち続ける民へ。