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けんか【アニカビ第2期署名支援】

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 角を曲がるとひゅいっと何かが飛んできた。カービィは方向を急にかえることでそれを避ける。と同時に後ろで爆破音(ばくはおん)が響き渡る。
「ブン、あなた一体何をしてるの?」
 攻撃の主にフームが怒鳴った。もくもくと上がる煙の向こうにはロボットの半透明のまるいガラスの向こうにある操縦席に乗り込んだブンがいた。
 だが彼は姉の声には答えず攻撃を仕掛けてくる。
 一発、二発、三発、爆弾が続けざまに放(はな)たれた。避(さ)けるため勢いよくワープスターが移動したのでフームは振り落とされてしまった。ひとり分の体重になって軽くなったとはいえ、一度に多くの爆弾はよけきれないだろう。
 現(げん)に背後から次の攻撃が発射されていた。
「カービィ、吸い込みよ!」
 フームは叫び、カービィは振り向くと同時に爆弾は口の中に吸い込まれて、そして
「ボムカービィ」
 ブンが操縦席の中でコピー能力をつぶやく。
 無尽蔵ともいえる勢いでボムが飛んできたらこちらのほうが不利になる。
 スイッチに指をかけながらも、時を待ちカービィの動きをじっと見る。
「ブン、ボクは キミと たたかう つもりは ないよ」
「なんだって?」
 攻撃されたばかりだというのにそんなことを言ってるんだ。甘い言葉は余裕(よゆう)のつもりなのだろう。
 くすぶっていた感情が爆発する。
「カービィは正義のヒーローだって調子に乗ってるんだ」
「ブン?」
 飛んできた爆弾をワープスターで避けながら声を張り上げる。
「おれだって、おれだって」
 強くなりたいよ。正義の味方はカービィだ。でもおれだって強くなりたい。
 男の子はヒーローになりたい。大好きなひとや国を守りたい。
 それをやすやすとやってのけるカービィはずるい。“生まれながらの星の戦士”。そんな力なくったって、
「勝ってみせる!」
 ぐいっとレバーを引く。すぐには動かず、ワンテンポ遅れたくらいで操作がきく。
 エスカルゴンの作ったロボだから不具合があるのか、と舌打ちをする。
 だが、カービィは自分に攻撃をしてこない。勝機はある。そして、自分だって強いことを認めさせてやる!
 あっちこちに外した爆弾が転がっては爆発を繰り返す。煙が舞う中ブンは軋(きし)むロボットでカービィを追いかけまわした。
「うまくいってるぞい」
「子どもは簡単にだまされるでゲスね」
 柱の陰(かげ)でデデデとエスカルゴンがしたり顔でカービィとブンの戦いを見ている。
 ブン相手ではカービィは逃げるほかない。強い力を持つ相手にはそれを使わせないのが一番である。
「これぞ『起動せんし』作戦でゲス!」
 ちなみにブンが操作しているように見えるが実はコントロールしているのはエスカルゴンの持っているリモコンである。白いスティック状のそれを振ったりボタンを押したりすることで自由に動かせるのだ。
 表はブンがカービィを攻撃しているように見せ、実際は自分たちでカービィを倒す、というのが今回の計画だ。
「これで、生意気(なまいき)なカービィに仕返しができるぞい」
 デデデとエスカルゴンがわははと笑ったとき、背後から声が聞こえた。
「子どものけんかに大人が出るのはどうかと」
「め、メタナイト!」
 リモコンで操作していたエスカルゴンが、うひゃあ、と情けない悲鳴(ひめい)を上げる。リモコンが手から滑り落ち床に落ちた。タイミングよく、いや悪くデデデが詰め寄ったせいで、白い棒状のそれは足に蹴(け)られてしまい、ついっと滑(すべ)っていく。
 グワッシャンっと勢いよく壁にぶつかり煙が上がる、と同時にコントロールを失ったロボットが暴走を始める。
 ブンが操縦席(そうじゅうせき)から振り落とされ床にぶつかる寸前(すんぜん)ワープスターに乗ったカービィが飛び込み受け止めた。
「どうして?」
 ブンが尋(だず)ねる。けんかしているのに、今まで攻撃(こうげき)をしていたのに…。
「だって ブンは ともだちだもん」
 友達は守るもの、けんかしたって友達は友達なのだ。
 ブンは急に恥ずかしくなった。まさしく彼はヒーローなのだ。なのに勝手に嫉妬(しっと)して、僻(ひが)んで、馬鹿みたいだ。
「カービィ、ごめん」
「ボクも ごめん」
「いやオレが悪い」
「ううん ボクが」
 そこまで言いあうとぷっと顔を見合わせ吹き出した。がそのとき、完全に硬直したロボットがゆらりと倒れかかる。
「カービィ、やっちまえ!」
 ブンが拳(こぶし)を振り上げると、カービィはボムを投げつける。
 爆風でロボットは燃え上がりながら壁をつきぬけ飛んでいく。
「ああ、まるで赤い彗星のようでゲス」
 エスカルゴンの嘆(なげ)きなど気にもかけず、カービィとブンはがれきの上でハイタッチをした。
「なによあれ、心配して損した」
 フームがじゃれあうふたりを見て肩をすくめる。
「子ども通しのけんかなんてあんなものだ」
 いつの間にか移動してきたメタナイト卿もその隣でも笑う。
「けんかをし合ってぶつかりあってそして成長していくんだ」
 仮面の奥の瞳が優しく揺らぐ。
「ふーん、じゃああれは」
 フームが指差した方向には、お互いに失敗の責任を押し付け合い、バタバタと走り回っているデデデ大王とエスカルゴンの姿があった。
「あれは、その」
 さすがのメタナイト卿もあのふたり組に関しては言葉がないようで、困ったものだとあきれたように見つめていた。
「あ、こらブン、片づけなさい!」
 騒ぎに乗じてこっそりめちゃくちゃの城内から抜け出そうとするブンを叱りつけるが、
「カービィ、行くぞ!」
 と叫ぶとふたりでワープスターに乗り込んで逃げ出した。
 すっかり仲直りしたカービィとブンは楽しそうに顔を見合わせ空へとワープスターで飛んでいく。
「ぽうよ」
 カービィはヒーロー、だけどまだ子ども。一緒に遊んで、一緒に大きくなっていけばいい。
 青空高く澄み渡り、今日もププビレッジはいい天気。

<おしまい>