わかんなかった、けど(上)
昼休み、辺見に、「放課後になったら、体育館の裏にある、でっかい木の下に来いよ。待ってるゼ。」って、言われた。
佐「あのやろぉ…、待ってるって言ったくせに…。俺のこと待たせてるじゃねぇか」
あのときは、眠たくてあんまり考えなかったけど、今になって何の用なのか気になってきた。
変なこと言ってくるんじゃないかなんて考えてる。
佐(遅い…)
石を蹴ったりしながらヒマをつぶしていると、
辺「わりぃわりぃ!遅れた!!」
と、息を切らせて、辺見が走ってきた。
佐「遅いぞ。言っとくが、俺だってヒマじゃないんだ。」
辺「スマンな。ま、すぐ終るって!」
ヘラヘラと、辺見が笑った。
俺はたぶん、しかめっ面だろう。
佐「笑ってないで、早く用を言えよ。」
辺「あ、あぁ…。実はさあ、俺、お前のことが―――――」
信じられない。
そんな気分だ。
佐「よ、よく聞こえなかった。もう一回言ってくれ。」
辺「えー…、チッ、しょうがないな…。もう一回だけ言うぞ。こんどはちゃんと聞いておけよ。…お前のことが、好きだ。」
佐「それ、本当に思ってるのか…?」
辺「何だよ、疑ってんのか?ったく。俺は、心の底から思っているんだ。」
「好きだ。」
聞きなれた言葉。
だけど、今のは何かが違うような気がした。
よくわからない、その気持ち。
辺「で、返事は?」
久しぶりに見た、辺見の真剣なその瞳。
佐(わかんないよ…)
自分の気持ちがよくわからなくて、何て返事をしたらいいのかわからなくて…。
好きか、嫌いか。
それさえわからない。
辺「どうなんだよ…?」
どうすればいいんだろう。
考えたけど、答えが見つからない。
でも、一応こう言った。
佐「いいよ。俺も、お前のこと…」
作品名:わかんなかった、けど(上) 作家名:ジ@ピォ