わかんなかった、けど(下)
小さい頃から家が近所で、よく遊んでいた幼馴染。
そして、いつも俺のめんどうを見てくれる兄貴みたいなやつ。
帝国学園サッカー部のレギュラー・MFで、一応実力はあるみたいだ。
でも、勉強は俺の方ができる。
身長も体重も俺とそんなに変わらなくて、どっちが先に大きくなるか競ってる。
俺がいじめられていたらすぐに助けに来てくれる優しいやつ。
喧嘩はよくするけど、仲が悪いってわけじゃない。
そんな、辺見にこの間告白された。
自分の気持ちがよくわかんなかったから、一応OKしたけど、今でも迷ってる。
(本当に俺はこいつと付き合ってよかったのかな)
(本当にこいつは俺なんかのこと好きなのかな)
(捨てられたりしないかな…)
そんな思いが、今日も俺の頭の中を駆け巡る。
いつでも俺の隣で笑っていた辺見。
不安な気持ちをかかえたまま、今日の昼休みを過ごしていた。
源「さーくまっ。」
と、源田が話しかけてきた。
佐「…何だよ?」
源「いやぁ、お前さ、辺見と付き合い始めたんだって?」
佐「あぁ。誰から聞いた?」
源「咲山から。」
咲山からか…。
咲山なら辺見と仲が良いし、本人から聞いたのかもな。
源「辺見とは、どうなんだ?」
佐「…本人に言うなよ?」
源「あぁ。わかってる。」
その返事を聞いてから、俺は話し始めた。
佐「悩んでるんだ。」
源「悩んでる?」
佐「自分の気持ちがわかんないんだよ。俺は、あいつが好きなのだろうか?答えが見つからないよ…。どうなんだろうか?」
源「俺に聞かれたってなぁ…。ま、嫌いだったら付き合ってないんじゃないの?」
佐「そうかもしれないけど…。…俺、捨てられないかな?あいつは、俺のこと本当に好きなかな?」
源「捨てられないさ。辺見のやつはそんなことしない!」
「そう言い切れる自信は?」と、聞いてみると源田は、「ないな。」と、苦笑いをしながら言った。
源「言い切れないけど、捨てたりはしないと、俺は思うよ。だってあいつ、佐久間が風邪ひいたら一番に来てくれるだろ?いつでもお前のこと一番に心配してくれる。それは…」
そこまで言って、源田は一息つくと、また口を開いた。
佐「それは?」
源「お前のことを、『愛』しているからさ。そうに決まってる!」
そう言って、源田は「じゃあな。」と、教室へ向かった。
佐(愛か…。)
少し考えてみた。
辺見の笑顔。
はっきりと浮かぶ。
笑顔だけじゃない。
怒る顔や、涙、困る顔に、寝顔。
全部、はっきりと覚えている。
そして、頭に浮かんだこと。
佐(俺はきっと、辺見のことが好き。)
心の中を、さわやかな風が吹いた気がした。
作品名:わかんなかった、けど(下) 作家名:ジ@ピォ