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【腐】平和ボケと初恋【臨帝】

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家に帰ると、僕の家に、笑顔の変態がいました。
「ん?あぁ、帝人君。おかえり」
「…臨也さん」
「帝人君、帰ってくるの遅いんだもん。先にあがらせてもらったよ」
「臨也さん」
「しかし、いつきても狭くてボロいよね、ここー。窮屈じゃないかい?」
僕は制服のポケットからボールペンを出して、それを構える。
臨也さんの笑顔が、サッと青ざめるのを見て、僕はニッコリと笑みを浮かべた。
「とりあえず、そこに座りなさい」
「…はい」
僕が指差したところに、正座をする臨也さん。
僕が向かいに座ると、バツが悪そうに視線をサッとそらした。
時計の針は、すでに7時を示しており、僕もお腹が減ってきた。
できれば、早く夕飯のインスタント焼きそばでも食べたい。
それなのに…この不法侵入者のせいで…!!
「…臨也さん」
「…はい」
「僕は今、とても怒っています」
「承知しております」
「誰のせいかわかりますね?」
「私のせいです」
「その通りです」
こうして会話している間も、僕はボールペンをひたすらノックしている。
臨也さんといえば、口元だけ笑いながら、チラチラと、ボールペンと僕と床を交互に見ていた。
そんな臨也さんの様子が、叱られている小学生のようで、少しおかしかった。
…まあ、そんなことはさておき。
僕は、臨也さんにいくつかの質問を投げかけた。
「どうやって入ったんですか?」「合鍵で」
「…いつ作ったんです?」「だいぶ前に」
「……何の用でウチへ?」「帝人君に愛に。間違えた。会いに」
「………その吊っている服は?」「帝人君に着てもらおうと思って」
「同情の余地なし!」
僕は笑顔でボールペンを振りかぶった。
「ちょ、ストップ!ストップ!」
…が、刺さる寸前のところで、臨也さんが慌ててよける。
ボールペンは空しく宙を舞い、僕の怒りを増幅させた。
こんなやりとりをしていても、僕のイライラの一番の原因であるものは、チラチラと視界の隅に映り込む。
いつも制服をかけているハンガーに、メイド服やセーラー服などの、コスプレ衣装がかけられている。
これを僕が着る?冗談じゃない!
追撃すべく、台所の方へよけた臨也さんの方を振り向く。
すると、なぜか冷蔵庫を勝手に開けていた。
「ちょ…!」
「ほら、帝人君!お寿司でも食べて落ち着こうよ」
さっきとは違って、楽しそうに笑う臨也さん。
何か言おうと口を開くが、タイミング悪く、お腹の虫がなった。…恥ずかしい。
ニヤリと笑った臨也さんは、ちゃぶ台の上にお寿司を置いて、手を合わせた。
「いただきます」
怒りより空腹の方が勝ってしまった僕は、臨也さんの前に腰を下ろした。
手を合わせて、一礼。
「…いただきます」
割りばしを割って、醤油のかかったお寿司に手を伸ばす。
(僕の目から見れば)光り輝くお寿司を食べながら、考える。
…臨也さん、ちゃんと「いただきます」言うようになったんだな。
少し関心していると、臨也さんは大トロを口に運びながらニコニコ笑った。
「俺ね、帝人君に言われてから、ちゃんと『いただきます』って言うようになったんだよ」
「…当たり前のことですよ」
口をついて出た、無愛想な返事。
…同じこと考えてたんだ。ていうか、素直に褒めてあげるべきだったかな。今のは。
臨也さんは、特に気にしてないらしく「帝人君なら、そう言うと思ったよ」なんて言いながら、ヘラリと笑った。
僕は中々素直になれない自分に自己嫌悪しながらも、それを食欲に変えて黙々とお寿司を口へ運ぶ。
すると、臨也さんは箸を置いて、「ねぇ、帝人くん」と肘をつきながら、話を切り出した。
「俺ってさ、最近平和ボケしてるのかなー、って思うんだよね」
「…臨也さんがですか?」
思いもよらない言葉に、首をかしげる。
毎日のように、静雄さんと喧嘩(という名の殺し合い)をしている臨也さんが平和ボケだなんて…。
そんなの、僕はいったいどうなるんだろう。
そんなくだらないことを考えていると、臨也さんはため息をついた。
「俺さぁ、華の青春時代も、シズちゃんのせいでまともに送れなかったんだよね。
だから、当然好きな子とかもいなくてねぇ。人間は愛してたけど。
まあでも、こういう風に一個人に対して、「こんな恰好してほしい」とか思ったり、「一緒に夕飯食べたい」とか、あんまり思ったことないんだよ」
コロコロと表情の変わる臨也さんの話を、黙ってきく。
(たぶん)自業自得とはいえ、高校時代を楽しく過ごせなかったのは、少し可哀そうに思えた。
そんな僕の様子を見た臨也さんは、ヘラリと笑った。
「あぁ、心配しなくても大丈夫だよ。アレでも、結構楽しかったからさ。
でも、うん。やっぱりね。恋はできなかったんだ。
だからね、帝人君に恋をして、こうやって…なんていうのかな。『平凡な幸せの日々』を送れるのがすごく嬉しいんだよ。なんだかすごく俺らしくないっていうかさ。
だから、最近平和ボケしてるな、って思うわけだよ。俺は」
嬉しそうに語る臨也さんを見て、僕は素直に、かわいいな、と思った。
そして、素直に嬉しかった。
だって、つまり、そう。
「つまりね、帝人君は俺の初恋の人なんだよね」
なんというか…やっぱり、少し恥ずかしいな。
相手が臨也さんとはいえ、『初恋の人』という響きは、少しむずがゆい。
…いや、臨也さんだからかもしれない。
なんて思ってしまったのは、僕も十分平和ボケしてるから。
でも、平和ボケの何が悪いのだろう。
やっぱり、そんな状態にいれるっていうのは幸せだからなんじゃないだろうか。
自己満足してお茶をすすっていると、「さて」と臨也さんが口を開いた。
「お腹もいっぱいになったことだし、さぁ、帝人君!どれがいい?」
臨也さんは満面の笑みで、壁にかかっているコスプレ衣装の数々を指差した。
僕は、僕の中で一瞬生まれた、臨也さんに対する様々な感情が、光の速さで消えていくのが分かった。
「俺的には、やっぱりメイド服だよねー。セーラーもすてがたいけどさ。いや、ナース服も…ねぇ、どれがいい?帝人く…」
「せっかく…せっかく見直したのに…!!臨也さんのバカ!!」
「ちょ、ま、そんなに怒らないでよ、帝人君!あ、ちょ、だめ、そこ頭…ギャアアアア!!」