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あしゅりー
あしゅりー
novelistID. 22013
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アルシャイフと一緒(MB6以降)

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1191年7月 エルサレム、夏
太陽がさらに輝き、暑さもいや増す季節である。
その太陽光のぎらつきすらも和らげてしまいそうな場所がある。
エルサレム中心に位置する、アサシン教団支部。
涼しげな音を出す水場に適所に配置された植物、敷き詰められた絨毯に
クッションが転がっている。
任務に勤しむ兄弟のために、と言う意図の元に作られたその部屋の隣、
執務室にて管区長マリク・アルシャイフは書類仕事に追われている。
今回の標的に当たる、テンプル騎士団長の報告をまとめ上げているのだ。
弟と己の左腕の仇敵とあって、彼の集中力は研ぎ澄まされていく。
その為か、彼にとっても馴染みの深い気が支部に入るのも気づかない。
「マリク」
奴の行動パターンを読み切るのに夢中なマリクの耳に、最近和解した友
アルタイルの声を聞き取り、訝しげに隣室の方に首を向けた。
アルタイルは入り口から頭だけを覗かせ、マリクを見ている。
八の字によった眉、口の端をきゅっと噛みしめた顔。
壁をつかむ手は指が順繰りに流れるように踊っている。
昔幼いときによく見た困り顔の友に、マリクは知らずため息をつく。
こいつめ、また何かしでかしたな。
「マリク・・・針と糸、無いか?」
質問と共に現れたアルタイルの惨状をみて、マリクは思わず目を
ぐるりと回し、天を仰いでしまった。

「これはまた・・・派手にやられたな」
大きな裂け目のある白い長衣を見、マリクはしみじみと呟いた。
簡潔に見ても、剣によるものだろう。
肩から帯まで、袈裟懸けに裂けたそれを手に取りつつ、マリクの目は
アルタイルの方を見た。
上半身の肌を晒し、友は情報収集の際に盗み取ったのであろう、メモ
に目を通している。
幸い、胸の辺りの皮膚を浅く裂いたに止まったようで、血は乾いている。
市民が兵に絡まれていたのを見逃せなかったのだ、と
攻撃を受けたが、咄嗟に後ろにかわしたーとは、アルタイルの談である。
義憤に駆られるのは結構だが、己の身を大事にして欲しいものだ・・・。
長衣を床に置き、マリクは深い深いため息をついて、治療に取りかかった。
塗れた布を傷口に当て、そっと拭き取る。
「痛いぞ」
「当たり前だ、この阿呆」
不満をこぼすアルタイルに軽く皮肉で返し、傷に軟膏を塗り、患部に布を
当てる事はアルタイル自身にやらせた。それくらいしても当然だ。
マリクはぶちぶち零しつつ、己の黒い上着をアルタイルにかけ、友の頭を
ぺち、とはたく。
「心配かけさせるな、アルタイル。ひやっとしたぞ」
むす、としたままのマリクにアルタイルの姿勢が自然と正座になる。
和解し、気が抜けたのもあるだろう幼き頃よりの癖で、マリクに叱られ
る時はこうなってしまうのだ。
アッバスやラウフが見たら、苦笑ものか。
「お前にまで居なくなられたら、俺は堪らん」
しかめ面ではあるものの、マリクの微かに震えた声にアルタイルも俯いて
しまい、そっと肩に手を当てた。
傷の所為で熱でもあるのか、顔が熱い。
思わぬマリクの感情の吐露に、気恥ずかしいのだと気づいていないのか。
「承知した。お前のためにも・・・気をつける」
ぽそりと告げたアルタイルの言葉にマリクもうむ、と頷く。
「怪我人は寝てしまえ。ほら、あの服は明日替りに着替えてしまえばいい」
照れ隠しとも言える、マリクの世話のごり押しにアルタイルは流される
ままに、寝させられて薄い肌布団まで掛けられた。
明日の朝のマリクの顔が楽しみだ、とアルタイルは意地悪な考えを持ちながら、
目をつむり、訪れる眠りに身を任せたのだった。