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きっちょめ
きっちょめ
novelistID. 18024
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いかないで愛しいひと

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「…いさん。にいさん」
またか。
か細い声に、プロイセンは小さく目を開けた。
プロイセンは眠りが浅い。軍事国家として生まれた名残か、戦うことが必要でなくなった今でも、微かな気配を感じると目が覚めてしまう。
暗闇の中、声がした方に左手を伸ばすと、すぐに指先が手触りのいい髪に行きあった。そのまま掻き回しながら、口を開く。
「怖い夢、見たのか」
脇に座り込んで顔を布団に押しつけていたドイツが、そのままの体勢で小さく頷いた。
「こいよ」
布団をまくり上げスペースを空けてやると、ドイツはためらうことなくその隙間に体を潜り込ませた。
いつから布団を抜け出していたのか、弟の体躯は指先まで凍えてしまっている。手足を絡ませ熱を分けてやると、いつもなら恥ずかしがって拒否するドイツも、素直に体を預けてきた。
重症だな。
プロイセンはドイツを抱きしめたまま、冷静に判断する。
いつもの「癖」にしても、今日のは特に重症だ。




ドイツは毎年、雪の降り始める時期になると、決まって同じ夢を見る。
何の夢かは、プロイセンも知らない。
それでも、青白く沈んだ顔から大体の予想はつく。
(俺が死んでないか、確かめに来てるんだろ?)
プロイセンが「国」の器を失くした時、一番取り乱したのはドイツだった。目が覚めた時、ドイツの泣き腫らしたような顔が側にあったのも、一度や二度ではない。一人ではなかなか眠ろうとしないので、布団の中に引っ張り込んでは無理やり寝かせつけたものだ。
質実剛健、男の中の男と目されるドイツが何よりも恐れているのが、兄の消失だと知ったら他国の奴らは笑うだろうか?
(かわいいやつ)
自分は消えるのか、それともこのまま残るのか。正直プロイセンにもよく分からない。ただ、こうやって弟が縋りついてくる内はまだ消えたくないな、とも思う。
(こいつを泣かせたままじゃ、夢見が悪くていけねぇよ)

「……すまない。いつまでも甘ったれで」
プロイセンの心臓の辺りに額を押しつけていたドイツが、消え入るような声で呟いた。指先はすっかり温もっている。
「………今度枕元に立つ時は、夜這いの方で頼むぜ」
金髪に指を絡ませながら耳元に囁いてやると、腕の中でまた少しだけ体温を上げたドイツが、小さくjaと応えた。