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黒く歪に揺らぐ太陽を眺める。こんなにも禍々しいものが太陽だとは到底思えないのだが、なかなかどうして、こんなものでも太陽だと言われると愛でたくなるのだろう。
反対に自分は僅かな輝きも失い見窄らしい姿を晒して、そこまでしてもまだ堕ちようとしている。なんだか自分でもとても滑稽に見え、それでいてどこか誇らしくもあった。それだけ自分は彼女を愛してるのだと実感する事ができたのだ。
この太陽と同じで、歪んでいると思う。けれどこれしか彼女を救う術はないから。

「アンタもおめでたい奴ね。そんなに自分を痛めつけて楽しい?」

不意に煩わしい声がして、千歌音は視線だけをその声の方に向ける。そこの鳥居には四の首が薄ら笑いを浮かべながら千歌音を見ていた。
はぁ、とわざとらしく溜め息を吐きながら再び歪んだ太陽を眺める。するとそれが気に入らなかったのか、四の首は何か刃物のような物を千歌音に向かって飛ばした。それを懐の剣で弾くと、四の首は諦めたように肩を落とす。
まぁいいわ、と彼女が呟いた。

「そんなにガン見するくらい太陽が好きなの?…でも、可哀想な月の巫女。アンタの想いは報われないのよ」

そんな憎まれ口を叩く彼女を見て、千歌音は思わず笑みを零してしまう。彼女が滑稽に思えて仕方なかったのだ。きっと彼女は相手より自分を優先するタイプだろう――実際、彼女は相手の為に何かをしている風には見えない。

「貴女だって、同じ穴の狢でしょう?」

笑いながらそう言ってやると、一瞬ではあるが彼女の目が見開かれた。しかしそれもすぐ笑顔に変わる。間違いない、彼女は今図星を突かれたのだ。
けれどおかしい。普段の彼女ならばこの時点で声を荒げたり飛びかかってきそうなものなのだが、今はそれがない。

「だからアンタって嫌いなのよ」

そんなことを考えていると、いつの間にか四の首は千歌音の直ぐ側まで来ていて、何か反応を示す前にその唇を塞がれた。
あまりの出来事に彼女を突き飛ばそうとするも、彼女が求めるのは千歌音のそんな反応だという事に気付き、一度上げた腕を降ろした。
彼女の思う壺になるのは癪だから、という理由からだったのだが、千歌音が意地を張って無抵抗になる事こそが彼女の狙いであった。
差し込まれる舌に混乱させられて上手く呼吸ができない。頬を染めながら眉を寄せる千歌音を見て、彼女を満足したかのように千歌音から離れた。
息を整えながら彼女を睨み付けるが、それでも彼女をへらへらと笑いさっきまで座っていた鳥居の上へと飛び移る。

「いいもの見れたし、今日はこのくらいにしといてあげる」

全く悪びれた様子もなく彼女は黒い闇に包まれ、姿を消した。その間際に千歌音の方を向きそっと放った一言を残して。

「きっと、アンタが死んでも太陽は輝くんでしょうね」

四の首の気配が完全に消え失せ、千歌音はその場にへたり込んでしまった。
…彼女はわかっていない。きっと彼女は千歌音が死んでも変わらず姫子は日々を過ごすことを皮肉として言っているのだろう。けれど、実際は全くの正反対。千歌音は自分を犠牲にしてでも、姫子に変わらない日々を過ごし、変わらず笑っていてくれる事を願っている。
それなのに何故だか最後に言われたその言葉が深く胸に突き刺さって、抜けない。生暖かい雫が頬を伝う。
――歪んだ太陽でも、それが太陽である限り千歌音はそれを愛でるだろう。


「……姫子…っ」


けれど、ここの太陽は酷く冷たい。




作品名: 作家名:nago