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かぐたんのゲテモノ日記

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×月×日(8)



見失った自分自身を取り戻すため、私は放浪の旅に出た。
”さがさないで下さい”
机に残した書き置きの文鎮代わりに、最近とみにふぇいばりっとすいーつであるくきわかめソフトキャンディも袋ごとごっそり置いてきた。私の本気度がいかばかりか、さすがのニブチン野郎どもにも伝わらぬはずがあろうか、いやない。(反語)
番傘一丁腰に差し、私はあてもなく川原の道を歩き続けた。――やっぱ源流の水うめー! ナチュラル・ウォーター・ハイも体験した。山をのぼり、谷をこえ、また山に入って幾数日、――ウチのカシラにならないか、ムーンリングスべア同盟の幹部に三顧の礼且つ三食昼寝つきで勧誘されたりもしたが、――私はムレる主義じゃないんでね、あばよとララバイおさらばしたのさラヴフォーエヴァー★
てくてく歩いていくうちに再び川辺の道に出た。グラサンのくたびれたオッサンが腰を降ろして釣り糸を垂れていた。
――YO!ブラザー景気はどうだい、私は気さくに声をかけた。――しーっ! おっさんが人差し指を髭面の唇に当てた。――メンゴメンゴある、私はしのび歩きでおっさんの隣にちょこんと腰を並べた。
見上げた空はピーカン、さえわたるとりのこえ、おっさんと美少女と渓流と釣り……、何かが始まる予感がした。タイアップ巻頭グラビア付き釣りバトルまんがかなァ、私はおもった。
――ねぇおじさん、私は小声でおじさんに訊ねた。――んっ? おじさんは空振りの糸を手繰って私を見た。グラサン越しにも伝わる深い諦念の情、苦みばしったダンディズム、リストラ、家庭崩壊、自暴自棄、まっさかさまの転落人生……。
――おじさんも苦労したんだね、私はしみじみ呟いた。――そりゃ生きてりゃ苦労のひとつやふたつ、誰にだってあるもんさ、うたうようにおじさんは言った。
釣り+ミュージカル……、ダメだ、まだ何かが足りない……! 私は立ち上がった。ねぇおじさん! うたって! 私といっしょにおどってよ!! 私はハトマメ顔のおじさんの手を取り、川原の上にくるくる華麗なステップを踏んだ。♪ルララフィッシングフィッシングふぃっしんぐ詐欺~、
――だっ、ダメだよおじょうちゃんそれは犯罪行為だよっ! 私の手を振り解いておじさんが言った。くたびれた中年オヤジの姿はそこになく、私は何故か、士官学校時代の恩師の面影を重ねていた。やや俯き加減に、グラサンに手を当て記憶の中の鬼教官は美声を響かせた、
――人間落ちて、落ちて落ちて落ちるところまで落ち切って初めて見えてくるものだってある、貴様はそこまで落ちたことがあるのか、まずはドン底を見て来い、ワケ知り顔で講釈垂れるのはそこから這い上がって来てからだメイビー!
――教官ッ! 私はひしとおじさんに抱きついた。――ウン、別に教官じゃないけどね、困惑気味に腰の引けたおじさんは言った。――じゃあ私、今日からおじさんのこと”コーチ”って呼んでもいいっ? ともかく私はこの奇蹟の出会いに興奮気味であった。脈絡なぞありはしない。――まっ、まぁ何でもいいけど……、おじさんは渋々ながらも”コーチ”と呼ぶことを承諾してくれた。
私とコーチの奇妙なストーリーは、こうしてこの日ここから始まった。


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