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残照

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 夕日が長い影と光とを交互に落として、正守の顔に光を当てる。
 瞼ごしに降る光がまぶしくて寝返りを打つと、同じ布団に寝る何者かに肩が当たった。
「……?閃?」
 果たしてそこに横たわっていたのは閃だった。そして気づく、自分も閃も生まれたままの姿で正守の部屋のひとつの布団で眠っていたことに。
「そうか、俺寝ちまったんだな」
 愛を交歓しあった後に眠ってしまったらしい。久しぶりだったので、つい無茶をしてしまった。何の気なしにのぞき込んだ閃の顔が苦痛や苦悩にゆがんでいない安らかなものであることを確認すると、ほっと胸をなで下ろす。そして改めて閃の頭に手を乗せた。
 普段はほめるときに撫でる程度でしか接触することはないが、残照に照らされて金色の髪が光る様はとても綺麗で、しばしそのさらさらとした感触を楽しむ。自然にウェーブがかっていて、少し柔らかい、猫っ毛というやつだ。
「ん……」
 そうこうしている間に閃も意識が戻ってきたらしい、目を瞬かせるととろりとした目線で正守を見る。
「……頭領?」
「おはよう、閃」
 そう答えると、閃は急に目を見開いてがばっと起きた。交互に閃と正守の両方を見比べて、今がどんな状況なのかに思い当たったらしい、顔を真っ赤に染めて上半身を起こすと、すごい勢いで頭を下げた。
「おはようございますっ!お、俺……」
「そんなに堅くなるな、閃」
 正守はつい苦笑する。もっとも、頭に乗せていた手がふりほどかれる形になったのが寂しかったのかもしれないが。
「でもっ、いつのまにか俺、俺、寝ちゃって……」
「お前が起きる直前まで俺も寝てたんだ、お互い様さ」
 正守がおどけた風に言ってみせると、はじめて閃がほっとした様子を見せる。一喜一憂する姿が、(本人にはおいそれとは言えないが)かわいいと感じる。しかも今の閃は。
「お前、そうやってると乙女みたいだぞ」
 そう言うと閃は顔にクエスチョンマークを浮かべて自らをあらためる。髪はほどけて肩口までを覆い、布団はとっさに胸の上まで上げて体を隠したせいで、まるで恥ずかしがる少女のそれのようなポーズになっていることにようやく気づいたらしい。
「その、頭領これはっ」
「女の子みたいだって言われるの、わかる気がするな」
 少しのいたずら心でそうからかうと、閃が俯いた。
「……ですか」
「ん?」
「変ですか、俺」
「変じゃないけど」
 むしろかわいい、などと言ったら閃がますます落ち込むのは目に見えているので、さてなんと言ったものか。しばし逡巡してから、正守は体を起こして閃ににじり寄る。
「変じゃないけど……?」
「そうだな――そそる」
 そう告げて閃の唇を奪った。柔らかくて、暖かい感触。驚いた気配が伝わって来たが、逃げられる前に背中に手を回して抱きすくめた。
 逃がさない。今だけは。
「ん……っ……」
 はじめは体を堅くしていた閃だったが、次第に肩の力が抜けて、正守に体重を預けてくる。こんな時、無上の喜びを感じる。信頼され身を預けられているという愉悦。自分だけがこんな閃の姿を独占しているという悦楽。
 こっそりと目を開けると、閃のまつげが微かに震えている様まで見てとることができる、二人の間になにも挟まない距離。
 胸を隠す閃の手を取り、白い肌を露わにさせるとそっと胸を撫でる。指が赤い突起にふれた時、電流でも流されたかのように閃がビクリと体をふるわせて、その反動で唇が離れる。
「あ……」
 自分の痴態に気づいたらしい閃がまた布団を被ろうとするが、それを阻止して正守は手を閃の足の付け根へと延ばす。
「とっ、頭領っ」
 あわてて後ずさろうとしたがもう遅い。
「なんだ、もうこんなになってるんじゃないか。キスと胸だけで感じちゃった?」
 閃は真っ赤な顔をさらに紅に染めて俯くが、その顎を掴んで正守は言い放つ。
「楽になりたいなら、これから俺のすることを受け入れろ。このままやめたいのなら、ふりほどけ」
 そう言って閃の顎を持ち上げて瞳を閉じる。閃の唇に自分の唇を重ねようとする。
 閃は抵抗しなかった。逃げることもなく、ただ不器用に正守の舌に自分の舌を絡めてくる。
 こうなることを心のどこかで予測していた自分の下衆さに苦笑いしながら、それでも正守はキスの合間に不適に微笑んだ。
 捕まえた。もう離さない。きっと今、自分は獣の目をしている。
 小さく萎縮する体を、どう蹂躙しようかと思索しながら、正守はこれからの甘い時間を予測して体に力が漲るのを感じていた。
 
                              <終>
作品名:残照 作家名:y_kamei