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月の庭

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 丸くて、でっかい月だ。
 我ながら情緒に欠けるとは思うけれど、これが自分の素直な感想なのだからしょうがない。
 たった今自分たちがお世話になったスーパーの看板の上に居座る今夜の月は、いつもより丸くて、やっぱりでかい――――ような気がする。
 そんな月が居る方向へ向かって歩いているのはあくまでも偶然そっちが帰り道だと言うだけの話であって、何も自分たちは月を目指して歩いているわけじゃあない。でも、ひょっとしてこのまま歩き続けたら、もっと月がでっかくなったりするんだろうか……と。少しだけ、そんなことを考えた。
 ――――ふっ、と。
 目線を少し横にずらすと、特徴的な栗色の髪のしっぽがわさわさと歩く度に揺れている。
 そこから更に視線を下に向けると、五本指の手袋をはめた手がゆらゆらと小さく前後に動く。
 そっと手を絡めると、ちょっと目を見開いた相手と目が合った。
「嫌だったか?」
 ちょっと卑怯な訊き方をすると、案の定睨まれる。それでも手を振り払われたりはしなかったから、多分OKなんだろう。
 向こうの左手と、こっちの右手にはスーパーで買ってきたばかりの食材とかがあって、向こうの右手とこっちの左手が都合良く空いている、なんて。――――つまりはそういうことだろう?
「……」
「……なあ」
「――――何だ」
「今日の月、何かいつもよりでかいと思わないか?」
「……ああ、」
 ――――確かにな、と。
 返ってきた肯定の返事に、「だろう?」と笑う。特に意味は無い。意味は無いけど、何となく嬉しかった。
 繋いだ手が、何となく温かいこと。
 くだらないと言ってしまえばそれまでのことを言って、その場で意思の疎通が図れること。
 ――――今日、ひとつのベットに2人で潜り込んで、一緒に朝を迎えるこれからの予定、だとか。
 当たり前になった特別が、嬉しい。
 願わくば、向こうも喜んでくれていればいいと思う。
「……風丸」
「ん?」
「――――今日は、ココアが飲みたい」
「分かった。じゃあ、帰ったらな」
「ああ――――」
 そこで、ふっと、お互い顔を上げる。
 夜空には、やっぱり丸くてでっかい、月がいた。
 
 《終わり》
夜のせかい
作品名:月の庭 作家名:川谷圭