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ハニー、お好きなように

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アメリカから電話があった。甘ったるい声で、今から会えない、とアメリカは尋ねた。イギリスはその言葉を聞くと口だけで笑んだ。
イギリスの家の周りは今日もずんぐり、綿みたいな立派な雲がまるでイギリスを逃がすまい、と主張するように取り囲んでいたし、やはりお約束のように小雨が降りしきっていたので、少なくとも良い心持ではなかった。イギリスは部屋の出窓からそんな天候を一瞥し、諦めたように嘆息をひとつ(もちろん電話越しのアメリカに悟られないように、だ)。

会いたいんだ、会えないかい?駄目なのかい、何か用事でも?暇?暇ならいいじゃないか、なんで、ねぇイギリス、ねぇ。

そんなようなことをアメリカはずっと言っていて、そしてイギリスはああ、とかうん、といった適当な文句で諌め、しかし結論は出さない、という汚い大人のやり方をしていた。
こういった電話がアメリカからかかってくるときは、本当に寂しく居たたまれないか、したい、かのどちらかであることをイギリスは心得ていたし(アメリカは普通なら、こんなおうかがい、の電話をする前にこちらへ足を向けてしまうんだから)、この電話が後者であることは嗅ぎついていた。
アメリカと恋人関係になったのはついこの間(俺たちの感覚からいくと、という意味でのついこの間、だけど)、だったし、身体を重ねるようになったのはさらに最近だ。そのころから、たまにこういう電話がくる。アメリカはいろんな意味でまだまだ幼くて、また無知だったから、イギリスを頼るよりほかないんだと思う。イギリスもそれを嫌だと思うわけではまったくなかった。むしろ、性欲処理に駆り出されるような間柄に(直接的な意味じゃないが)なりたがったのはどちらかといえばイギリスであったし、何度も言うが、アメリカにそれ、を教えたのも彼であった。
しかし何故億劫がって会ってやらないのかといえば、いろいろ複雑な想いはあったのだけれど、簡単に言ってしまえば、アメリカより優位に立ちたがったのだ、イギリスは。身体を重ねあうことを自ら望んだ、(そして仕込みもした)くせに、都合のいい時だけ呼び出される売女、みたいな真似はしたくないのだった。そこがイギリスの持つ大きな矛盾だった。アメリカは若い所為もあってイギリス以外の人間を知らない。そして純真であったから、きっとこんな電話をかけられる相手はイギリスだけなのだろうし、他の相手など許せるわけはなかった。つまるところイギリスは、アメリカが自分だけを求める現実に満足し、そうしてこういう必要とされる電話があった時に極力焦らし、お前の都合のいいハニーじゃないんだぜ、ってことを暗に主張しているのだった。
それは秘めやかな楽しみであった。アメリカに対して優越感を得ることを、イギリスが本能的に望んでいるともいえた。

電話越しのアメリカは、半分拗ねた声で、もういいよ、知らないよ君なんて、と言ってイギリスの悪口を並べ立てていた。それがある意味でのアメリカの屈服のしるし、だとおもったイギリスはひとり口角を釣り上げ、悪い悪いと繰り返した後に、言った。それは今のところ、イギリスの大きな武器なのであった。アメリカは気付いていないのかもしれないが。

「逢ってやるよ、ハニー、お好きなように。」
作品名:ハニー、お好きなように 作家名:ノミヤ