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佐久間の右目(グロ注意)

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父さんは酒癖が悪かった。
いつも母さんに暴力をふるっていたし、俺も何度も殴られた。
母さんはそんな父さんにずっと怯えて過ごしていた。
お金なんてないのに父さんはずっと酒を飲んでいたから、俺は盗みを何回もした。
老人が営んでいる酒屋から盗んだこともあったし、金を稼ぐために掏りだってした。
あんまり思いたくはないけれど、そのせいで体力がついたのかもしれない。


ある日父さんはいつも通り酒を飲んで暴れていた。
母さんを庇おうとしたその時だった。

ぐちゃり、

父さんの持ったアイスピッグが右目に突き刺さった。
抉られたのかはよくわから無かったけれどひどく痛くなって、涙の代わりに血が出ていたと思う。
右目は真っ暗で左目は涙で視界なんてものは意識出来なかった。
だけど左目でぼんやりと見てみた。
母さんは真っ青になって俺を抱いていた。
父さんは、見てない。
しばらくの間父さんは何もしなかったようで、母さんは違う部屋で泣いていた。
いつのまにか手は血まみれで赤黒かった。
いっこうに痛みは続くし涙は出るし痛くて痛くて動けなかった。
ふと俺は気がついた。
さっきから眼が見えない。
伏せていた右目を開けても何も映らない。

―ああ俺の右目は死んだのか

その事実を認識すると俺はよろよろと立ち上がり台所に行った。
足場の無いほど転がる酒瓶。
父さんのせいで割れた酒瓶も転がっている。
まるで俺みたいだ。



置いてある包丁を持つと、俺は台所を出た。
そして酒を飲み続けている男の背後にたって、

包丁を突き刺した。

刺された男は叫びながら抵抗してきたけど、持っていた包丁が頭にあたるのと同時に死んだ。
死んだのだ。
あれほどまでに母さんを苦しめた男は。
あれほどまでに俺を苦しめた男は。
あっさりと、俺の手で。
許せなかった。許せるはずがなかった。
簡単に死んだ、死にやがった。
激しい怒りが込み上げてきて、動かない男の腹を何度も刺した。
ふと気がつくと母さんが見ている事に気がついた。
俺が振り返ると母さんは尻をついて怯えていた。
かわいそうな母さん。
いままで辛かったよね。

怯える母の胸を刺した。



その後は家にある燃えそうな物全てを集めて、火を付けた。
部屋が十分に燃え始めて、母も父も炎で見えなくなった時に家を出た。
そして群がる近所の人達に走っていって、『知らない人が入ってきて』とつげた。
幼い俺の言うことを疑う奴なんておらず、そのまま救急車にのって病院へ行き、手当をうったが右目はもう戻らなかった。