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神様

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“ほかの皆さん”は、その都度その都度恋人や子供を見つけるようですね。

私は今までも、そしてきっとこれからも“人間の子供”というものを育てることはないでしょうし、育てたいとも思わないのですけれど、子供はどこから見つけてくるのですか?と何かの折に尋ねてみたところ、仰ってましたよ。施設からもらってくるんですって。今は民間団体や国での子供の権利や養育というものにどこも他国から指を指されないよう宗教だの文化だの関係なく身寄りのない子供というものは国にある程度は保護されているようなので、私たちみたいなこの世のものとはまた違うといいますか、神とでもいいますか、物の怪とでもいうんでしょうか、なんとはなしにこの世界に存在してしまっている者といえど孤児をどこから引っこ抜いてきて、おままごとでもするように家庭というものを与えてやる事もなかなか難しいのですけれど、その当時は、まぁ、どれほど”当時”というのか私には検討もつきませんが、そういった“当時”というのはよく施設からもらってきたそうですよ、子供を。私たちは一応性器というものはついているにはいますし、食事が必要ということは排泄もしますけれど、それでも、とりあえず、ついているというだけの事のようですし、とりあえず人間のするところの性行為という事だって可能ですけれど、けれどまぁ自分個人というアイデンティティーと自我の元での魂というものだってない存在であるのに、何故精子や卵子なんていう生命を持っているのでしょう。いくらセックスをしたって、お医者様にかかったって、私たちのような存在には決して子供なんて作れませんからね。精子や卵子そのものが生命か、ならば口内に潜むバクテリアだなんだの類だって一生命体だなんて言い出したらキリもありませんが、それでもやはり精子や卵子があったとしても、そこには魂のかけらもありませんよ。やはり、そういうことになっているんでしょうね。私たちみたいなものが子供なんておこがましいという神の意志でしょうか?いえ、神がいるかどうかなんて知りませんけどね。時代によっちゃぁ私が神だったくらいのものですから、くっく。卑屈な笑いかた?そんなの私だってしますとも。でも卑屈というのは引っかかります。卑屈というより、ある種達観したような気持ちの笑いだったんですが、まぁ、そんなことはどうでも良いでしょうね。私たちだって、いわばバクテリアみたいな存在ですから。国家というものの細胞ですよ。体内の細胞ひとつひとつが意志なんて持ってしまえば思考するというのも面倒ですし、常に体内で民主制をとり、足の細胞の許可を取って腸の細胞の批判を抑えて・・・ああ、なんてばかばかしい!細胞よりも寄生虫かもしれませんね。

――――ああ、えぇっと、なんの話でしたっけ?ああ、子供?子供ね。子供ですねぇ。子供なんて私は育てたくもないのですよ。ですが一度、たった一度だけ、育てた事がありましたよ。それっきり懲りてやめてしまいましたけどね。



さぁいつの時代でしたか、さっぱり覚えていませんけれど、畑を耕し、食事をし、戦をして、眠って、死んで、生まれて、食べて、性行為をして、する事といえばそれ位しかない程度に昔の話ですが、私はある村から離れた山奥でひっそりと暮らしていたんですが、どういうわけか私はそこで神になっていたそうです。山神さまだとか、氏神さまだとか、竜神さまだとか、そういう田舎の神様ですよ。二百年も暮らしていれば人間にとっては神なんでしょうね。それで山の入り口に祠なんて建てられちゃって、しかも毎日信心深い村の人々が食べ物やわずかなお金までお供えしてくれるので、仕方ないなぁ、とそれを思い出した頃に回収に行く位は私も神様の役をしたんですが、そんなものは全て狸やイタチやお腹を空かせた旅人が持っていくのだろう、と村の人々は私に気づきませんでしたけどね。しかしある年、村に干ばつがやってきましてね、神様に生贄として美しい処女でもささげれば雨を降らせてくれるだろう、とくだらない話になったのですよ。ああ、面倒な事になったなぁ、と思っているうちに本当に若い娘が山奥をとぼとぼと歩いてくるじゃありませんか。村の垢じみた娘を綺麗に洗ってやって、申し訳程度に化粧までさせましてね。村の人々にとっては若くて美しい生娘かもしれませんが、太古から生きている私にとってはとりたてて見るべきものなどないような乳臭く、垢抜けない田舎娘ですよ。それでもとぼとぼと山の中へ入ってきて、途方に暮れたようにぽっつりと立ち止まるんですよ。村人だってこの娘を手ずから殺してその生き血を森に捧げられる程残虐な性質でもない。とりあえず山の中へと一人で行かせればきっと神様が生贄を攫って行き、あとは好きなようにしてしまうだろう、という程度の生贄です。村の大人だってそうなのですから、娘だってどうすれば神が自分を迎えに来るのかなんて分かっちゃいません。それでも自分は死ななくてはいけないような、死ぬならば獣に食われて死ぬのではなく、神に食われて死ぬのだ、と思いつめたような途方に暮れたような顔をしているのですよ。あれには参りましたよ。私の家のすぐ近くで座り込んでしまったんですから。仕方なく娘に声をかけましたよ。娘は生きているという事を恥ずかしがるような、そんな笑みを浮かべました。―――その羞恥だけで十分でした。

だから私は娘を家に入れた。やがて娘は家中を掃除して、私が気まぐれに山に出て、帰ってくるまでの間に畑の野菜を使って熱い汁を作って待っている。そのうちに世間で言うところの夫婦のようになりましたが、それっきりです。私はいつ娘が死んだのかすら覚えていないのですが、それでもしかし死んだんでしょうね。


子供、という話からは遠ざかりましたかね。でもそれが私の持っている精々人間のような話です。それっきりです。それっきり私は人間は育てていません。だって私、神様ですからね。


作品名:神様 作家名:山田