【敏夏】高校舞台でラブラブちゅっちゅ【屍鬼】
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「おはようございます!」
「ああ、おはよう」
職員室に向かう途中、生徒達から声が掛かった。敏夫は腕を挙げそれに答える。
尾崎敏夫はこの高校の保険医だ。保健室に行く前に職員室によって会議に参加する。
保険医に必要なのかと問われれば、必要と答えるしかない。
この朝の会議では報告がある。
誰が休みで、そして誰が登校していないのか。
朝の段階で分かっていることの方が少ないが、昨日の情報ならもう揃っている。
前日に体調を悪くしている者が翌日は元気だという保障は無い。用心のために、担任と保険医はそれを頭に入れておく必要があった。
そして後者の「登校していない者」
これは前者の病欠の者と似て非なるものだ。
登校していない。
それはその言葉のままの意味。
何らかの事情で登校していないのだ。休学という手段もあるが、多くのそれらはその手続きをしていない。
無断であったり、親が登校させる意があるからだ。
そう、彼らは周囲の期待とは裏腹に登校しようとする意が無いのだ。
そんな中のひとりに「結城夏野」がいる。
「せんせ、もう来たの」
「もう来たのじゃない。なぜココで寝ている」
そんな朝の会議も終わり、保健室へと入るとベッドに生徒が寝ていた。
「夏野くん、そろそろ授業が始まる時間だが?」
そう。結城夏野がそこに居たのだ。
「授業でてもつまらないし」
「進級、危なくなるぞ」
夏野の成績は悪いほうではない、というか良い方だ。
始めはなぜこの高校に来たのか不思議だった。だが、話を聞けば簡単だ。夏野の家から学校へと通うにはこの高校しかない。地元に残ることを選択した者は皆、この高校に入学する。
しかし、夏野ほどの学力なら都会の高校に入学し、寮生活という選択もあっただろうに。
「父さんが学校行けって五月蝿いから来ただけだ」
夏野の父親は何かと夏野に無理強いを要求するようだった。
夏野は都会生まれの都会育ち。
それが田舎暮らしに憧れた両親が突然引越しを決めたのが、夏野が中学三年生の時。
そして高校進学時に、せっかく田舎に来たのに都会に戻ることは無いと、父親の強行な姿勢でほかの高校への進路の道は立たれてしまったのだ。
だからこうして田舎の高校にこうして通うことになってしまったのだが。
「だから学校には来てる。問題ない」
「おい、夏野くん」
言うが早い。夏野は布団の中へとその身体を隠した。
「……ったく」
確かに、と敏夫は苦笑しながら、夏野が寝ているベッドを隔離させるためのカーテンを引く。シャッと甲高いカーテンレールからの音に交じり、夏野の声が聞こえた。
「せんせ、」
それは布団の中からだろうか。くぐもった声。
「どうした? 本当に具合悪いとかじゃないのか?」
はっきりとしない夏野の声に、敏夫は腰を屈めた。
「をッ!」
突然、布団の中から腕が伸びてきた。それは敏夫の白衣を掴み、グンッと引っ張る。
その突然の出来事に、敏夫は身体のバランスを失ってしまった。
「危ないじゃないか」
引き寄せられてしまった敏夫は、夏野が寝ているベッドへと倒れてしまう。しかし、ギリギリのところで、夏野の身体を押しつぶしてしまうことは避けられた。
だが、今これだけを見られてしまったら騒ぎになるだろう。
「まるで、襲ってますって格好だ」
布団から顔を出した夏野が出した言葉に、敏夫はため息を吐いた。
「君は……、」
ここは学校だぞ、と叱るはずが、その言葉は音となることなく夏野に吸い取られる。
くちゅっ、と音を立てる接点。互いの唇が相手を嬲り、舌が交差する。
「あのなぁ」
キスが終わり、敏夫は愚痴った。
「明日まで待て、頼むから」
そう。敏夫と夏野はそういう関係だ。
「明日まで待つ。でもキスぐらい良いじゃないか」
かわいい恋人が熱った顔をさせて強請る姿に、男が揺らがない訳が無く。
「明日の休みは、楽しませてもらうからな」
「うん、いっぱいしてよ」
夏野の言葉に敏夫はニヤリと笑い、そして、夏野の唇にふたたび触れた。
作品名:【敏夏】高校舞台でラブラブちゅっちゅ【屍鬼】 作家名:ツバサハナコ