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こらぼでほすと HGP番外編2

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「縛る? ハレルヤが、そう言ってるけど。」

「首に鈴をつける?」

「足に鎖は、どうだ?」

 横で交わされている会話は、かなり危険な代物だ。普通、療養中の人間に対してする仕打ちではない。

「・・・おまえらさ・・・俺を、どうしたいわけ?」

「てめぇーが、自覚しないからだろーがっっ。」

 すぱーんと、ベッドに座って、こめかみあたりに手を置いているロックオンの後ろ頭を、小気味良く叩いているのは、チェンジしたハレルヤだ。

 そして、そのハレルヤに、どすっっと蹴りを叩き込んでいるのが、刹那で、倒れこんだハレルヤの腹に片足を乗せて、ふんぞり返っているのがティエリアだったりする。

「直接攻撃は禁じたはずだ、ハレルヤ・ハプティズム。」

 じろっと睨んでティエリアが、どすっと足を振り下ろす。筋肉マッチョなハレルヤだから、さほど堪えていないが、ロックオンは頬を引き攣る光景だ。刹那が、結構、暴力的なのは知っていたが、ティエリアまで、そうだとは気付かなかった。

「おい、やめてやれよ。それ、半分はアレルヤなんだからさ。」

 おいおい、と、止めているロックオンに、三人がじっと視線を合わせて睨んでくる。ベッドから降りようと足を下ろした行為が問題らしい。

「「「絶対安静」」」

 三人揃って、ロックオンに人差し指を突きつけて叫んでいるのだが、なんだか、大型犬に、「ハウス」 と、命じているようなノリだ。

「大人しくしてられないあんたが悪い。」

「ドクターからの指示は完璧に遂行してもらう。」

「ロックオン、今日は大人しくしてないとね。」

 いや、だって、日射病だか熱射病だかだったわけで、別に、それほど無理しているつもりはないのだ。だが、朝から微熱があったので、もう一度、ドクターが診察に訪れて、「疲れが溜まっているんじゃないだろうか。少しは、ゆっくりしていなさい。」 と、叱られたことに、この騒ぎの発端はある。

 ついでに、奇跡の生還者様のバルトフェルトとハイネが、うんうんと、その意見を肯定したのも、悪かった。

「俺やハイネはコーディネーターで、おまえさんより頑丈にできているんだ。それでも、一ヶ月やそこいらで、元の生活はできなかったからな。」

「だいたいさ、過保護すぎんだよ、ロックオン。あんたんとこの子猫たちは、自分で何でもできる年齢だぜ? ちょっとは、顎でこき使えよ。」

 ダメ押しに、ディアッカが、「八戒さんに気功波ぶちこまれる前に悔い改めてくれ。」 と、脅したので、三人が、躍起になって、ロックオンをベッドに押し込んでいるのだ。当人、熱が下がって退屈だから、ちょっと散歩を・・・とか、ちょっと読書を・・・なんて動こうとするので、三人とも頭にきたらしい。

「誰も 『絶対安静』なんて言ってなかっただろうが。極端すぎんだよ、おまえらはっっ。」

 そして、空気を読まない25歳は、まだ、こんなこと言ってるわけで、心配している三人の神経を逆撫でしまくりだったりもする。

「やっぱり、縛ろうよ。」

「そうだな、それが一番手っ取り早い。」

「縄を探してくるか。」

「・・え・・・あのさ・・・わかったから、なあ、わかったからさ。寝てるから。縛るのはやめろっっ。」

 本気で三人でやられたら、ロックオンには勝ち目はない。すごすごと、ベッドに横になって、布団をかぶった。





 ああ、そういうことなら、と、ハイネが余計なことを教えたので、刹那は、早速、それを実行した。

「あれ? ようやく開放されたのか? ロックオン。」

 謝るどころではなかったので、日を変えてディアッカが顔を出したら、庭の木陰で、新聞に目を通しているロックオンがいた。珍しいことに、一人だ。横手に、ラジオとか飲み物とか置かれていて、至れり尽くせりの様子だが、当人は、ディアッカの顔を見て、苦笑している。

「開放? これでか? 」

 つい、と、両手を差し出したロックオンに、ディアッカも絶句した。両方の親指を細い紐で纏めてひとつに縛ってあるのだ。外せないように、ご丁寧に団子結びを何重にもしてある。

「それ、なに? 」

「ハイネが教えたらしい。確かに、これ、効果はあるぜ。」

「ああ、俺らも習ったよ。拘束技のひとつだ。」

 本来は、後ろ手で、親指同士を、細いワイヤーで縛る。簡単かつ効果的な拘束法として、軍人なら誰だって習っているだろう手法の一つだ。

「余計な知識を吹き込まないで欲しかったな。」

「でもさ、ちょっとゆっくりしたほうがいいんだろ?・・・・悪かったな、すまん。」

「いや、ディアッカが悪いわけじゃないだろ? ありゃ、『吉祥富貴』なりの歓迎セレモニーなんだろ? 」

「まあ、そういうもんだけどさ。」

 のんびりと、そんな会話をしていたら、部屋のほうからガチャーンと盛大に何かが割れる音がする。

「悪い、ちょっと手を貸してくれ。」

 両腕が不自由になると立ち上がるのも一苦労だ。だが、見に行かないわけにはいかない。たはーと溜息ひとつを吐いて、ロックオンがゆっくりと戻っていく。

「ほっとけよ、そんなこと。」

「そうもいかないんだ。ほら。」

 さらに、続いて、ガシャーンという音と、ティエリアの怒鳴り声だ。たぶん、掃除していて、花瓶でも引っくり返したに違いない。毎日毎日、この音を聞かされるほうが堪えるんだけどなー、と、ディアッカに苦笑する。

「毎日? なんで?」

「あいつらさ、純粋培養テロリストなんで、日常の家事能力ゼロなんだよ。・・・だから、俺が自分でやったほうが安全確実だってぇーのに、この仕打ちだ。」

 掃除をやめてほしい、と、切実に思う。いや、自分たちのことは自分たちで、とは言ったが、備品の被害からすれば、別荘の人間にお任せしたほうがいいと思われる。

「えーっと、やめさせるように説得したほうがいい? 」

「できれば・・・」

 ゆっくり療養させるには、三人から引き剥がしてやったほうが効率的なのでは? と、ディアッカは同情しつつ、出窓から中の惨劇を見て、顔を引き攣らせた。

「これ、毎日なのかよ? ロックオン。」

「うん、三日くらい、これだ。」

 花瓶とスタンドランプが、盛大に床で壊れている。それを見て、右往左往している三人だ。そりゃ神経に堪えるだろう。

「刹那、大きな欠片だけ拾え。ティエリア、新聞紙貰って来い。アレルヤ、掃除機。」

 てきぱきと指示して、ふうと息を吐いているロックオンに、自分でやりたいだろうなーと、ディアッカも納得した。