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love,love,love,for,you

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君の笑顔が愛おしかった。
君の笑顔が狂おしかった。
君の笑顔が憎くて仕方なかった。
どうしてもぶち壊してやりたかった。
だって、俺が君のことを考えるだけでこんなにも暗い想いに囚われていくのに、君はそれに気づかぬまま愛する人と幸せに、だなんて、そんなのおかしいだろう?不公平だろう?




「いいいいいいざあああああやああああああああくうううううううううううんんん?!!」
振り向くと声の方から何故か自転車が飛んできた。声の主に当たりをつけて微笑みを浮かべる。
「うおっとシズちゃん、今日も朝から元気だねえ」
「『元気だねえ』じゃねえ!臨也てめえ!おまえだろ!!」
「なにが?」
「この写真学校中に貼って回ったのだよ!!!」
そう言って震えるシズちゃんの手(どうやら怒りに震えているらしい)(どうでもいいけど)には数枚の紙が握られている。具体的に言うと一枚の写真を拡大しプリントアウトした紙だ。どうでもいいけど。
「さあ?どうだろうねえ」
「ふざけんな!てめえ以外にこんな下らねえマネする奴いやしねえんだよ!正直に言えコラ!!」
「正直に言ったら俺に何かいいことでもあるわけ?どうせどっちにしたってシズちゃん俺を殴らないと気が済まないんでしょ?ていうか今時殴って物事解決した気になるとか古いよ。そんなの昨今少年漫画でもないよ。少年漫画だってある程度話し合いとかするもんだよ。正義の味方気取るならある程度相手の事情も汲まないと」
「うるせえ!わるいが俺は正義の味方じゃないんでな。虫の居所がわるくなったらたまには手だって出すぜ。とくにおまえ相手にはな」
「たまにはって。シズちゃんが暴力に走るのはいつものことじゃない」
「それもぜんぶてめえがいらねえことしなかったらねえっつってんだよこのクソノミ蟲があああああああああああああ!!!!!」
どこからその声出してんの?声帯壊れない?と言いたくなるような大声を出してシズちゃんは手に持っていた紙を破り捨て、代わりにそのへんにあった机を手に掴んだ。その席に座っていた男子生徒の身体が硬直する。

その紙にはシズちゃんがとある女子生徒と手を繋いで下校する様子を撮った写真が大きくプリントアウトされていた。推察どおり、それを校舎中の壁という壁に貼って回ったのは俺だ。下らないことをするとお思いだろう。だけどその手間のかかる作業の中で俺がどんな気持ちでいたか、シズちゃんはしらない。全然しらない。しっていてはくれない。


あのね、シズちゃん、愛しさ余って憎さ百倍って言葉しってる?
あれさあ、笑わせるよね。
愛してるならその愛が憎しみに変わるなんてことあるわけないじゃない。
バカらしいよね。
でもさあ、そんなことがあるんだよ。その言葉がずっと生き残ってきたのにはちゃんと意味があって、つまりそうして愛を憎しみに変える人間がとても多いってことなんだよ。
ふふ、バカらしくて涙出てきちゃうだろ。
そして俺もそんなバカな人間のひとりってわけ。バカらしすぎて涙も出ないね。



ねえ、不思議に思ったことない?
君今までいっぱい告白されてきただろ。いっぱいとは言わないまでも十人くらいには言われたよね。『好きです、付き合って下さい』って。その返事を君がしないうちにその子たちがみんないなくなってしまったこと、不思議に思ったことはない?みんな行方不明になって、君の前から姿を消しただろ?
突然だけど予言をしてあげるよ。その今君が破り裂いた紙、その紙に君といっしょにプリントされてた女の子、その子明日にはいなくなってるよ。そして二度と君の前にあらわれることはない。



怒り心頭に発した状態のシズちゃんが手当たり次第に掴んだものを投げながら俺のことを追ってくる。その顔には俺に対しての怒りが満ちていて、だけどすみっこのほうに自分といっしょにいたばかりに写真を晒された彼女への罪悪感が覗いてる。ねえ、シズちゃん、やめて、やめてよ。俺の目の前で俺以外の誰かのことを考えるのはやめて。俺だけを見て。じゃないと今、君に向けて伸ばしたこの腕が、指先が、止まることをしらずに君を壊してしまう。




暗い欲望と焦りが俺の背中を濡らしていく。それは冷えた感覚になって背筋をなぞるように脳髄へと忍び込んで俺の理性をぶち壊す。その瞬間が俺はいつも怖くて仕方がなくて、なのに俺の手はいつも止まることなく君へと伸びて君の幸せを奪おうとする。ねえ、ねえ、ねえ、お願いだ、俺を止めて。俺を止めてよ。





君が不幸せになれば俺はいつだってこの手を止めて君の幸せを願いともに死ぬことができる。


作品名:love,love,love,for,you 作家名:坂下から