もらいもの。
いつも通りの顔に見えたけれど。どこか苦手なものを見る目だったのに気付いていた。
デスクワークに追われて、肩を回していたアイツに隣の女子社員が肩凝りなんかにもいいんだよと差し出したもの。それが何かは分からなかったのだけれど。
「何もらったんだってばよ」
「欲しいならやる」
ようやく終わった仕事。人気のない会社を出て、歩くサスケの隣に並ぶ。
「何なんだって……お灸?」
どう見たってお灸にしか見えないもの。
「サスケが貰ったんだから使えば?」
「いらねー」
「肩凝りにいいって言ってたのに?」
「いらねーつってんだろ」
そう頑なに拒否されて。
「……もしかして苦手、とか」
まさかな、と思いながら聞けば、視線をそらされて。
当たった、なんて思ったけれど。
「なぁ、何で?」
「何の話だ」
合わないままの視線と、早くなる歩調。
こんな時だけ分かりやすいなぁなんて思いながら。
そうして。
何だかんだで話す事も知っているから。
視線が合うまでずっと見続ければ、諦めたようなため息を一つ。
「ガキの頃に嫌な思い出があるからな」
「嫌な思い出?」
「火傷」
それだけ言って黙り込んだから、これ以上は話す気はないらしいけれど。
「なぁ、火傷のあと消えた?」
「はぁ?見えねぇのに知るか」
「見えない?」
サスケには見えない、けれど。見る事は出来るわけで。
「消えてるか確かめてやるってばよ」
腕を掴んで、向かうのはサスケの部屋。
「ふざけんな。余計なお世話だ。つーかお前、自分の家帰れ」
「確かめるって決めたから帰らねーよ」
知らないところなんてないはずだけれど。
こんな口実、逃すわけがない。