キャンディ
いつだって、用事がないなら出て行けと言われるけれど。
ただ、机に向かって作業する背中を見ているだけ。
そのために昼休みを潰している、なんてバカらしい事くらい分かっているのだけれど。
だってそうでもしないと会えないってばよ……。
自分でもどうかと思うけれど、この同性の。愛想もない保険医が好きだと気付いてしまったから。
そんな風に思われてるなんて絶対気付いていないはずの相手を見るためだけにここに通って。
「そろそろ休み時間終わるから教室戻れ」
「……もうそんな時間?」
授業なんてサボって眺めていたい、なんて望みは絶対に許してもらえるわけがないからおとなしく教 室に戻るしかないのだけれど。
休み時間短いってばよ……。
言う事を聞かないと蹴りだされる可能性があるから出口へと向かって。
「あぁ、そうだ。手だせ」
「へ?」
「手」
言われるまま掌を差し出せば、そこに落とされたのは色とりどりの飴玉。
「やる。オマエ誕生日だろ」
滅多に見れない笑顔でそんな事を言われて。
真面目に授業受けろよ、と追い出されて。廊下に座り込む。
あーあーもう。何なんだってばよ……!!
甘いものが好きではない事は知っている、から。それでくれたのだとは思うけれど。
あんな顔は反則だ。
とりあえず。教室に戻るまでに紅くなってるだろう顔をどうにかしないと、と考えていた。