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もかこ@久々更新
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novelistID. 3785
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「名前をつけてやる」・3

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そんなことがあった、そのときから考えて、フェリシアは随分大きくなったし、自分も少し年を取った。
今では、勝手に寝室に入ると怒られてしまうほどだ。
店は、11時のオープン。
オープン前に客が来ることは、珍しいことではない。
外のテラスのイスを勝手に下ろして、勝手に新聞を読んでいる。
しかし、その日は違った。
「わぁ、いらっしゃい。また来たの?」
「おう!フェリシアーノちゃんに会いたくてv」
「や~だ、お代2割増しだよっ?」
昨日の銀髪の男。またフェリシア目当てで来たようだ。
にやにやと笑って、気味が悪い。
あまり人を疑うことをしないフェリシアは、いつも通り、他の客に接するときと同じように話しているが、堪らなく嫌な予感がした。
今までの、穏やかな生活が乱されるような、そんな予感。
しかしどこにもその根拠がない。追い出すこともできない。
どうしようもなく、その客にあまりフェリシアに話しかけないことを約束させるしかなかった。
ざわつく胸が落ち着かない。
「おうおうボヌフォワさんよぉ!俺の飯はまだかい、えぇ!?」
「あっ・・・あぁ。待ってろよ、サディク。お前は常連なんだからよ」
「かぁ~っそういう客こそ大事にしやがれってんだ!!大体おめぇはよ、ぉ?」
昼の12時、ピークタイム、
忙しそうに接客するフェリシアを、銀髪が捕まえた。
「え、ちょ、お客さん?駄目だよ、今忙し・・・・きゃあああっ!!」
上がる悲鳴、噴き上がる砂煙、飛び散る窓ガラス。
満員の店内に、突然現れた災い。
土煙の中を一人の男が歩いてくる。
表情は変わらない。無表情に、テラスにいたフェリシアと銀髪目掛け歩いていく。
辺りは阿鼻叫喚。せっかく守ってきた、軌道に乗った店はぐちゃぐちゃだ。
呻き声、怪我人。泣き叫ぶ女、サイレンが近づいてくる。
「いってて・・・何だってんだぁ?自爆テロか?」
目の前で食事をしていたサディクは、無事なようだ。
店内の客はそれぞれ呻きながらも、何とか起き上がってくる。
その様子を見て安心したフランシスは、何よりも大事なものの傍に駆け寄っていった。
「フェリ!!フェリどこだ、無事か!?」
土煙がひどく視界が利かない。
その間にも、爆音、銀髪が何事か喚く声がする。
「兄ちゃん!!助けて!!」
土煙がひどい。目も開けられないほどだ。
こんな日が来るのかもしれないとは思っていたが、まさか。
こんなに早く。
あまりに酷くないか、なぁ、神様。
「フェリ!フェリ!今兄ちゃん行くぞ!!兄ちゃん行くからな!!」
一歩、足を進める。
映画のようじゃないか。
しかも陳腐なアメリカ映画。
何度地球を破壊すれば気が済むんだと、当時付き合っていた女に言って、
『ロマンのない人ね』と蔑まれた。
フェリシアはその意見に、賛成してくれた。それから、
『きっと、恋をするのが苦手なんだよ』と付け加えてくれた。
その言葉に腹を抱えて笑ったものだ。
いつものテラスがこんなにも遠い。一歩も歩けないように、遅々と足が進まない。
声が聞こえない、どうしよう、今頃、ボロボロになって打ち捨てられていたら。
「フェリ!フェリ!!」
必死にその名前を呼ぶことしか出来ない。
一瞬、強い風が吹いた、
土煙が晴れ、やっとのことで目を開けることができた。
「何だってんだよ・・・!?」
想像を絶する光景が、目の前に広がっていた。
歩いてきていた金髪の男の腕から、何やらヤバそうな銃火器が生えている。
背の高い、目立つ薄い金髪。
精悍な顔立ちからは、今の状況を想像できない。
腕の半分からが銃火器だなんて。
こんな化け物が目の前にいるなんて。
フェリシアを抱える銀髪は、頭から血を流している。
血?血と同じ色には、見えないが、どこだかのアニメのように緑色な訳でもない。血ではなさそうだ。
言うならば、オイル、
あいつは人間ではないのか。
よく判らない状況、いつかテレビで見た、戦争のような。
もっと機械っぽいアンドロイドなら見たことがある。テレビで。
あれはおおよそ人間とは思えない見た目をしていた。
何なんだ、こいつらは。
夢なら覚めてほしいと思った瞬間、また激しい爆音と銃撃がフェリシアを襲っていた。
「兄ちゃん、こっち!!あわわっ、来ちゃ駄目ぇ!!」
すぐ足元を銃撃が掠める。
しかしこちらを狙う気はないらしく、あくまでフェリシアの方にしか銃を向けないようだ。
早すぎる。まだ、フェリシアと数年しか過ごしていない。
「来ちゃ、だめー!!兄ちゃんが撃たれちゃううぅ!!」
感傷に浸りたいそんな思いの中であることなど構いもせず、金髪はフェリシアめがけて銃を放ってくる。
やめろ、やめてくれ。
俺から、フェリを奪わないでくれ。
腕や胸に銃創を作りながら、にやりと笑う、銀髪。
「いいから、待ってろ!おい銀髪、フェリを離せ!」
「兄ちゃん、逃げてぇぇ!!」
何を言い出すんだ。
お前らしくもない。
ビビりで何かあるとすぐ逃げ出してしまうお前が。
フランシスがふざけるなと叫ぼうとした、その瞬間。
「甘いぜっ、ヴェスト!闇雲に討つだけじゃあ、勝てねぇんだぜ!あばよ!」
素早く跳び跳ねて、崩れかけの屋根を伝って、銀髪が逃げていく。
フェリシアを抱えて。
足が遅いのか、金髪は銀髪が跳び去って行った方向を睨み付けて、走り去っていく。
取り残された。
取り残されたその場所に、今更になって警察が駆けつけてくる。
唸るサイレン、救急車。
呻く客たちを、遅すぎる救急隊員たちが介抱していく。
「待ってくれ、俺の家族が。俺のフェリシアが、拐われたんだ。助けてくれ、なぁ・・・・」
意識がふらふらする。
自分を見て救急隊員が何事か怒鳴っている。
全く理解できない。
外の様子を見に来たサディクも何かを叫んでいる。
フェリ、フェリシアを助けてくれ、誰か。
口が渇いて、砂を飲んだようで、カラカラして堪らなく不快だ。
どうすればいいのか。
どうすれば、もう一度フェリシアに会えるだろうか。
「おい、ボヌフォワ!おい、しっかりしろい!ボヌフォワ、ぼぬ・・・・・・」