二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

こらぼでほすと HGP番外編4

INDEX|1ページ/1ページ|

 
珍しく夜明け前に目が覚めてしまった。寝直すつもりが、なんだか目が冴えて眠れない。

・・・・しょーがねぇー、ちょっと燃料でも補給するか・・・・・

 こそっと起き出して、台所の大きな冷蔵庫まで遠征した。そこにしか目的物がないからだ。好きなものを、どうぞ、とは言われているが、さすがに本格的に飲むのは、自分も、ちょっと怖い。弱くないつもりだが、アルコール臭くなると、となりに寝ているのが、怒るに違いないからだ。しかし、他のは、皆、飲まないから、部屋の冷蔵庫には補充されないのだ。

「なんていうか、至れり尽くせりだよな、ここは。」

 大きな冷蔵庫の中には、いろんな種類のビールが置いてある。各国取り揃えているのかと思うほどの品揃えの良さだ。まあ、それは、納得はできる。人種も出身国も違うバラバラの人間たちが出入りするから、どうしても、こうなるのだろう。ちゃんと、自分の国のビールもあったので、それを二缶、取り出した。この時刻だと、屋敷は稼動していない。シンと静まり返った空間を、自分の足音だけが響く。わざわざ戻ることもない、と、大きな居間のソファに腰を下ろした。

 ぷしっ

プルトップを開けて、ごくごくと半分ほど飲んだ。よく考えたら、何ヶ月か飲んでいない。本格的にミッションが開始される前は、スメラギとちびちびと飲んだりしていたが、いつ、出なければならないのか、わからない状態で飲むわけにはいかなかったからだ。

「あーーーうめぇー。」

 机に置いた、もう一本のビールに、自分のをカコンとぶつけた。

・・・どっかで飲んでるのかな・・・・

 どこかにいるであろう人を思い浮かべて、うっすらと笑った。どこまでも理不尽で歪んでいる世界だが、穏やかに生きていてくれればいい、と、願っている。このビールが故郷の味だと言い合えるだろう相手。ようやく、それを思い出せる心の余裕ができた。

「輝かしくなくてもいいけどさ、戦いのない未来であればいいよ。」

 ぽつりと漏らしたのが本音だ。ひとりになることが、ほとんどなかったので、なんだか、深呼吸するみたいにふうーと息を吐いた。まだ、先があるから、自分には無理だろうが、そういう未来へ辿り着いて欲しい。

 そんなことを考えていたら、ヒタヒタと足音が近づいてきた。たぶん、となりで寝ていた相手だろう。

「ここだ。」

 さほど大きな声でなくても、それは届いた。足音が早くなって、自分の前に辿り着く。

「どうした? 」

「それは、こっちの台詞だ。」

「目が覚めたから、大人の嗜みってやつをやってた。」

 ほら、と、缶ビールを目の前で振って見せてやる。まだ、未成年は、それを取り上げると、がばりと抱きついてきた。

「ん? 」

「勝手にいなくなるな。」

「まだ、ダメか? 刹那。」

「ダメだ。」

 取り上げた缶ビールを握りつぶしそうな勢いなので、それを、もう一度、取り上げて、ごくごくと飲み干した。あれから、姿がないと探すようになってしまった。余程、あの衝撃は凄かったらしい。

「勝手にいなくならないぜ? 今んとこ、俺は、おまえらに軟禁されてるようなもんだからな。」

「わかるもんか。 あんたは勝手だからな。」

「今度は・・・・いや、どうかわかんねぇーしなあ。・・・まあ、バイトしている間は消えないさ。そこから先は、約束できない。」

「それは、俺も、だ。」

「そうだな。・・・・寝られないのか? 」

「違う。あんたが動いたから。」

「眠り浅いんじゃねぇーのか? それ。」

 音を立てないように、こっそりと動いたつもりだった。それでも目を覚ますというなら、あまり良い傾向ではない。別々に、寝ようと提案はしているが、まだ、イヤだ、と、拒否されている。

「浅いんじゃない。寒くなるから判る。」

「・・おまえは、猫か?・・・ったく、わかったよ、戻ろう。」

 体温が感じられないと不安になるらしい。突然にいなくなったから、それが精神的に、かなり堪えているらしい。落ち着くまでは甘やかしておこうと、思っているが、なんだか、小さい子供みたいになっている。

「これも飲むんだろ? それからでいい。」

「いや、これはいいんだ。相手をしてもらっていただけだ。」

 机に置いていた缶ビールを手にして立ち上がった。違う未来へと辿り着くだろう相手の代わりにしていた。そして、右側の二の腕辺りを掴んでいるのが、同じ未来へ辿り着くだろう相手だ。冷蔵庫へ、それを戻して、空き缶をゴミ箱へ捨てる。道は別れるのだと、それを見て頬を歪めた。

「おまえはいいのか? 」

「いらない。」

「なら、帰ろう。悪かったな、夜中に騒がせて。」

「かまわない。」

「明日の朝、好きなもの作ってやるよ。何がいい? 」

「えび。」

「えび? はあー、こらまた朝から豪勢な。焼くのか? 」

「野菜と混ぜたヤツ。」

「ああ、サラダな。」

 誰もが眠っている夜明け前の屋敷を、たわいもない会話をしながら部屋に戻った。しばらくは夜中の飲酒もままならないな、と、内心で苦笑した。