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レディローズは純潔を穢す

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一匹の綺麗な蝶がやってきた。
模様と色合いがとても綺麗な蝶だ。

その蝶は、やがて目の前に来て、自分を見つめている。

だから自分もその綺麗な蝶を見つめた。
一人と一匹がいる不思議な空間。

そこに僕と蝶は、生きていた。



【レディローズは純潔を穢す】




君はまるで、蝶のようだ。

そう言った後に見た彼女は瞳を大きくさせた
あ、驚いた。こんなアーデルハイトの反応は貴重かも。

普段表情を硬くしている彼女の少しの変化が見れて嬉しかった。

「何故私を蝶だと思うの」

だけど今度は僕が驚く番。

彼女が僕のふざけた話に興味を持つなんて。
なんだか今日はついてるのかもしれないと思った。

答えを待つかのように僕をジッと見つめる彼女を見て、僕はまたあの感覚を味わった。

「そうだね…君が、」

僕の前に彼女が現れた時だ。ふわりと音もなく舞い降りた姿を見て、思った。
自分の目の前に一匹の蝶が舞い降りたと。とても綺麗な蝶がいる、と。

「綺麗だからかな」

こんなありきたり言葉、しかも彼女を目の前に使って良い言葉ではない。
アーデルハイトはこういう情緒たる恋愛のような言葉を嫌っている。

だから彼女にそんな言葉をかけた僕はきっと、彼女の女としての身を辱めるように彼女の戦士としての誇りをも、穢しているのだろう。

だけれど、言わずにはいられない。
僕の中で彼女の位置は常に最上位なのだから。

嘘は言ってない、訂正する気もないし、否定だってさせない。
これだけは誰であっても譲れないと、彼女を見れば。

「そうね…」
「…アーデルハイト?」

ふわり、そんな緩やかな…穏やかな笑みを自分に向けていて、僕は戸惑った。
そして彼女も笑いながら負けじと唐突に物を言うから、少し参ってしまった。

「私が蝶なら、炎真は──花、真っ赤な花よ。蝶にとって、なくてはならない蜜の源だわ」





fin.