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一日を開けるためにそれだけ分の仕事量を少しずつだが確実に消費すること一週間。折原臨也は久しぶりに池袋にやってきた。
天に届くほどのひしめきあったビルも猥雑な広告も祭りのような人波もまこと何でこんなのがいいのかね。人、ラブ!と呟きながら木枯らし吹きつけるビル街を歩いていた。
綺麗な女優が映るスクリーンに目もくれず、キャッチやナンパを掻い潜りながら、臨也は勇み足で何かを目指して歩き続ける。平和島静雄を探すためだ。
目撃情報と今までの統計から、おそらくこの辺りだろうと目星をつけ、臨也はうろうろする。朝から探し始めたのにようやく静雄の姿を確認したのは昼すぎのことであった。

(ホテルー?)
見ると静雄とその上司の田中トムが高級そうなホテルから出てくるところだった。なんでそんなところにとか、もしかしていやまさかとか、彼のバーデン服もなんかこの場だとしっくりくるなあ、とかぼんやりと考えていると
先輩、とヴァローナが二人に駆け寄った。
「今日は午後出勤とのことでしたが、何か火急の用でもあったのですか」
「ん、さっきまでそこのホテル行ってきた」
ヴァローナはちらりとホテルを見る
「ああ、ここ知ってます。人気があるとか」
「やっぱトムさんが選んだののが一番いいっす」
「別にあれぐらい何度でも連れてってやるよ」
「まー年齢的にきついけどなあ。お前ほんと何回…」
「まあ、好き、なんすよね」
そう言って照れたように笑った。一部始終をみていた臨也は立ちつくしていた。もしかして、いや、まさか、シズちゃんに限ってそれはない、けどシズちゃんの田中トムに対するなつきぶりは数年来だ。なんとか魚のようにはくはくと呼吸をしていた。幸せそうに。

陽もとっぷり暮れ、仕事を終え静雄は家路を急ぐ。
「おつかれ、シズちゃん」
角を曲がろうとした矢先にいつも聞きなれてる小憎たらしい声が飛んできた
「あ?臨也…なんでいんだよ」
「疲れた?まあ、当然だよね。田中トムとずっと一緒にいたんだから」
「は?何でトムさんが出てくんだよ。一緒って、いつもの事だろ」
「そうだよね「いい加減にしねえと怒るぞ、マジで」
「ねえもうヤったんだよね?俺よりよかった?」
「…トムさんの悪口言ってんじゃねえよ!」
ぷつん、と何かが切れる音がした。いつもと変わらない光景だが、通常と違ったいたのは、キレたのは静雄ではなく臨也だということだった。
「ーっんだよ!!シズちゃんこそ何のうのうとした顔してんだよ!!」
激昂ーそういう言葉が似合うほど叫んだ。先程まで青筋立てていた静雄もビクリと萎縮する。でも、もうとまらない
「楽しそうに笑っちゃってさあ、なんなの。見たことないんだけど」
「は、おい、」
いつもとは違う臨也の姿に静雄は狼狽する。恐怖ですら覚える。
「シズちゃんは俺だけ見てればいいんだよ!!尻尾ふってんじゃねえよ!」
ああもういっそ無理矢理犯してやろうか。ガンッと音を立てて壁に押し付け、キスをしようとしたらシズちゃんは青い顔をして避ける。
「なに抵抗してんのさ、バレたらもう俺に触れられたくないってわけ?」
「いや、抵抗するだろ、まずお前の言ってる事わかんねえし!つか落ち着けって」
「ずっとずっと好きだったんだ、今更誰にも渡すかよ!」
「ノミむ…臨也!落ち着けって、お前何キャラ崩壊してんだよ!」
「うるさいっ!」
「聞けっつってんだろ!」
ついに堪忍袋の緒も切れて力任せに臨也の頭を叩く。ゴンッと鈍い音が響いた
「~~っ」
「…落ち着けって…一行にどんだけ感嘆符使ってんだよ」
あまりの痛さに目の前でズルズルとへたりこむ。
「…死ねよ」
「まだ言うか」
「…シズちゃんが悪いんだろ。上司とセックスとかしてさあー」
「あ?だからしてねえって。お前ほんと怒るぞ」
「しただろ。」
だって、2人でホテル行ったって。そう言うときょとん、と目を丸くする。その後何かを考える仕草をして数秒
「……あー…お前さ、頭いいのに何で想像力そんな乏しいんだよ」
「は?」
暴言を言われてシズちゃんの袖を握る手にも力が入る。
「あー悪かった。目くじら立てんなって。ホテルってなんだ、ケーキバイキングにいったんだよ。」
シズちゃんの言い分はこうだったそろそろ誕生日ならとトムさんがケーキでも驕ってやると言い出した。どこにしようか悩んだが、トムさんがおもむろに「でもでケーキはちょいちょい奢っているから誕生日って感じもしねえよなあ」と言い出したのだった。
「いやいや!十分ありがたいっすよ!」シズちゃんがあわてて否定すると、「あっじゃあ、バイキングに連れて行ってやるよ。お前いつも物たりない顔してるし、好きなだけ食れるほうがいいだろ?」
…とのことだった それを聞きながら俺は、え、ケーキバイキング?そういえば、ロビーにはいやに女の子が多かったような…いやいや、それにしてもあの会話紛らわしすぎだろ!ワザとだろ!そしてアウトだろ!その前に何2人仲良くバイキング行ってんだよ。不自然すぎるだろ!というつっこみをしたくてたまらなかったが、その前に俺は先ほどの会話、主に自分が頭に血が登っていたときのセリフをリフレインする。
なんかとんでもなく恥ずかしい事を言わなかったか?やばい。今すぐ逃げたい。
「ーっ…!!」
「ええと…い、臨也…」
「出直してくる忘れて。忘れないと殺すから死ね」
「ちょっとまて」
がしっと捕まれる。シズちゃんはやれやれとため息をつく
「何で男2人で、しかも昼間っからホテルとか状況おかしいだろ」
「全然おかしくないし。前に昼間からラブホでヤったの忘れたの?」
そう言うと赤面してまた俺を殴った。依然として小気味いい音は響いたが、今度は優しくなっていた。
「なんでそう下世話な方に持ち込むんだよ。ジョーシキで考えろって、勘違いにも程があるだろ…つーか、お前でもんなことあんだな…キレすぎだろ。んで、全然外れてるし。」

やべ、すげーうけんだけど。そう言ってシズちゃんはすごく楽しそうに笑った。なにそのいい笑顔。てかシズちゃんが常識とか言うなって。ほんとまじで死ねよと思うがあまりに楽しそうに笑うからうっかり何でもいいか、とか思いそうになる。
「ずっと好きとか初耳だしよ」
「別に。本心だし。」
あーはいはいもうほんとどうにでもなればいい、俺はポケットにしまっておいた箱をなげた。
「あ?なんだこれ」
「誕生日プレゼント。開けていいよ」
シズちゃんが今開けようとしている、シンプルな装飾の小さなその箱には指輪が入ってる。俺は稼ぎがいいので別に給料何ヶ月分とかじゃないけど、まあ、そういうことだ。
何であそこまでキレたんだとさっきシズちゃんが言っていたが、そりゃあ一生に一度のプロポーズをしようとした矢先にあれじゃあそれは怒りもするさ。
見るとシズちゃんが真っ赤な顔をして突っ立っていた。シズちゃん、と呼んでもぼーっとしていて、状況は違うがなんだか数時間まえの俺みたいで俺は小さく笑った。

「愛してるよシズちゃん。ずっと君を幸せにするから」

だけど浮気はしないでね。そう言って俺は掌に口づけた。

作品名:1・28 作家名:マナ