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家庭教師情報屋折原臨也7-1

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 ――― あー、急所いったのか?これ

すると、視界が霞み、音が遠ざかっていった。

 ――― やべ、意識が……

「まずい、『折原臨也』が来た!」

 ――― 折原、臨也……?

最後に聞こえた名前に、静雄は納得した。あの最初に感じた違和感は“これ”だったのかと。
 そしてそのまま、意識を手放した。



   *   *   *



 橙の陽が差し込んでいた。確かこの天井は来良総合病院だったっけな、と記憶をたどった。

「目、覚めた?」

ぼんやりとする頭を右に動かすと、臨也の姿が目に入った。

「……」
「何で俺がここにいるのかって聞きたそうな顔だね。丁度君の所に行こうと思っていたらなんか変な音が聞こえてさ。駆けつけてみたら君が倒れていたんだ、……血塗れで」

そう言った時の臨也の顔はどこか蒼白だった。

「お母さんは今医者と話してるよ」

それを聞いて、静雄は午前中のメールを思い出し、悪いことをしたなと思った。それよりも今はこの男に聞きたいことがあって仕方がなかった。
 呼んで来るよ。そう言って立ち上がった臨也の手首を静雄は掴んだ。

「なぁ、臨也」

静雄は肘をついて起き上がり、臨也を見上げた。

「何?」

そう聞き返す臨也の顔にはいつもの温和な笑みが張り付いていた。今の静雄にとってはそれが鬱陶しくて仕方がなかった。

「お前、何か隠してるのか?」
「別に何も」

突然どうしたの。そう臨也は言った。その声に僅かな震えを見抜き、静雄はさらに被せた。

「何で俺を刺した奴らが、お前のこと知っていたんだ?」
「!…それは」

臨也は目を見開き、そして表情を取り繕うと視線を静雄から外し、言葉を濁した。静雄は手を伸ばして臨也のコートの襟をつかむと、自分の方に引き寄せた。静雄のほぼ真上に臨也の顔がきた。目を合わせるのが億劫なのか臨也は目を伏せたまま気まずそうな表情をしていた。

「お前」

更に聞きこもうとしたところで、病室の引き戸が開いた。母親と幽だった。
 静雄はばっと手を離した。そして臨也は機会を得たと言わんばかりに身を翻しドアの方に進んだ。

「じゃあ、私はこれで。お大事に」

そう母に会釈をして逃げるように病室を出て行った。外に出て丁寧にお辞儀をする母を背に、幽は静雄の横に立った。そしてひざを折り静雄の視線に合わせた。

「何かあったの?兄さん」
「いや……」

静雄は手首を掴んでいた手をじっと見つめた。



   *   *   *



「…そッ!!」

だんっ、と臨也は壁を叩いた。しかし誰も振り返らない。振り返る人がそこにはいなかった。音だけが空しく反響した。
 路上に血まみれで倒れていた静雄を見た時以上に肝が冷えたことはなかった。臨也は壁に寄りかかり、ぎりり、と歯を食いしばった。そして病院であるにも関わらずポケットから携帯を取り出し、ある場所に電話を掛けた。それは数か月前、池袋の裏を取り締まってもらうように頼んだ場所であった。

「…どういうことですか」
『あなたに頼まれたことはちゃんとやってますよ』

電話越しの低い声は淡々と言った。間違っていないのだがその返事に苛立ちを感じながら、臨也は返した。

「彼らの現在はご存じで?」
『それはもちろん。しかしこういったことはあなたの専門ではありませんか?』
「…まぁ、そうですね」

どうやら教える気はなさそうだ。失礼します。そう言って臨也は電話を切った。確かに自分はあの資料については彼らに手を回してくれるように頼んだ。そして確かにあれは資料外の、数か月前に“捨てた”集団だった。臨也は自分の楽観さを呪った。

 ――― 絶対、消し去ってやる

携帯電話を握りしめ、獲物を捉えた狩人のような鋭い目で臨也は窓の外を睨んだ。