臨帝超短文寄集
5
ただの好奇心、ちょっとした興味、退屈しのぎ。それらしい理由はいくつでも思いつける。なるべく重たく聞こえない方がいい。だって俺のことを彼がそんな意味で好いていないことくらい分かっている。だから真剣な感じでつきあってくれなんて言っても、受け入れてもらえる可能性なんて万にひとつもない。でも遊びでならもしかしたらあるかもしれないじゃないか。いやいや、俺だって別に本気なんかじゃないんだよ?好きなのは人間全般であって、個人じゃない。彼につきあおうなんて言うのは、ただ……、いや、特別な理由とかないんだって。今特定の相手がいないから。それだけ。
今は一緒にいて一番面白い相手だから、それくらいの軽い気持ちだと自分にも相手にも言い聞かせる。そんな口説き文句が妙にせっぱつまって聞こえるなんて気のせいだ。
「ずっとつきあおうってわけじゃないよ、つまらないと思ったらいつ終わりにしてもいいんだ。そういうの楽でいいと思うよ。だから、俺と、どうかなあ?ね?」
なんだこれ。普通に告白するよりよほど必死感が漂ってるような気がするが気のせいだよな?相手にとって都合のいい条件ばっかり並べているような。これって、そんなにまでしてもちょっとの間だけでもいいからつきあってほしいって言ってるように聞こえないか。気のせいか。
すみませんけど、と前おかれて肩をすくめる。お断りの予感。
「あの、僕はそんな適当な感じで誰かとつきあうなんて、考えられないです」
そうだよな。眉間によせられた皺を見て、出そうになったため息をなんとか飲み込む。その通りだ、この相手は、そんな擦れた関係を望むようなタイプじゃなかった。駄目だった、間違えた、振られた。もひとつついでに、ろくでもない大人だと思われただろう。いや、それは元からかもしれないけれど。
「ですから、どうせつきあうなら、ちゃんとしてください」
一瞬きょとんとしてしまったのは仕方ない。それから慌てて頷いた。おかしいな、口説く前は、ちゃんとしたおつきあいなんて面倒だと思っていたはずなのに。