臆病者よ。
「…君が何であろうと、僕の想いに変わりはないよ」
「ひ、ば…」
「好きなんだ、」
君が、どおしようもなく、好きなんだ
確かめるように、身体の芯に染み込ませるように
ゆっくりと吐き出された愛の言葉
そこに、悪意も偽りもない
白く、丸い、純粋な想い
幸福すぎる、恋愛
だけど、
「…お、れっ…は、」
彼の想いに答えることはできない
オレには、そんな資格がないんです
――そう言えれば、どんなに楽なのだろう
けれど、言えなかった
もしかしたら、彼とのつながりが切れてしまうと思ったから
細い糸でもいいから、彼とのつながりを持っていたいから
結局オレも、彼が好きなのだ
彼がいつか、自分の元から消えてしまうのが恐くなるほど、
オレは彼が好きなのだ
でも、
そう自覚したところで、オレにはどうすることも出来ない
「――っ!」
…不意に、涙が溢れる
拭っても拭っても、涙は止まることを知らず、
まるで、言えない彼への想いを代わりに伝えているようで
ますます、涙を止めることが出来なかった
「ごめん…」
君を好きになって、ごめん
眉根を寄せて謝罪する彼
今にも泣きそうな表情で無理に微笑む彼
嗚呼――本当にこの人は、オレの事を…
「っ……ぅ、」
ごめんなさい、ごめんなさい…
貴方の想いに答えられない、臆病なオレでごめんなさい
後悔にも似た懺悔は永遠に、
彼の元へは届かなかった