二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
沁(しみる)
沁(しみる)
novelistID. 22666
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

君の名残、僕は泣かない

INDEX|1ページ/1ページ|

 


葉の上を、花弁の上を、雨は軽やかな音を立てて流れていく。
さあああ、と心地の好い雨音。
肺の隅々、一杯まで空気を吸い込む。
雨の日特有の、懐かしい土の匂いがした。

薄汚れたフードを取って、空を仰いで。
僕の髪に、頬に、首筋に。ああ、雨はするりと滑り込んでくる。
瞼を閉じれば、ゆるやかにつたって落ちる。
みるみるうちに水分を含んで、僅かにしっとりとした重みを孕む。
体温も徐々に下降していき、指の先が冷えていくのが分かる。


雨は、好きだ。
余計なものを洗い流してくれる雨が、僕は好きだ。
それに、かつて僕の隣にいた彼を忘れないでいられるから。


おもむろに背後を振り返る。
道は、果てなく僕の背から伸びていた。
あの日から、今僕は果たしてどのくらい遠くに来たのだろう。
もはや、それを知ることは出来ないけれど。


「  」


彼の名が、唇から零れてちいさな飛沫をあげ、ちいさな水溜まりに波紋を拡げて沈んでいった。


「  」


さあああ、という音に時折混じる水溜まりのぴちょん、という音。
あまやかな彼の鼓動のようだと思った。


(  、君はそこにいるの?)

彼――僕の片割れである彼――の名は、まるで僕と同じもので。


「僕はここだよ。ほら、ここにいる」


雨に向かって、小さく叫んだ。



君の名残、僕は泣かない
(耳に残るのは、波紋を広げる君の心音)



:)

おっかなびっくり初投稿です。太古の昔に書いた物をこちらにこっそり。
大分残念な出来になっています。