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もうひとつの出会い

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歌を聴いていたのだと、思う。
なんの根拠もなく、自信すらなく、だが彼は言い切った。
とても懐かしいうたを、誰かが歌っているのを聴いたんだ、と。
そうして気がついたらここにいた。

「ここは、何処だろうね?」

半ば笑いながら困ったように問いかけてくる彼は、あたしと同い年くらいだろうか。

「…っていうか、どちら様?」

ひどく達観した面構えで、それでも物珍しそうに、彼は、辺りをぐるりと見回した。
なつかしい、と、聞こえたような気がした。

「ええと……そうか。えーっと、この辺りの親戚のおじさんの家に泊まりにきてたんだけど、色々あってそれは無しになったんだ。で、駅に行かなきゃいけないんだけど、道に迷って」
「………うた、を、聴いてたから?」
「そうかも」

いまいち目の前の彼のひととなり、がつかめない。怪しい人間ではなさそうだけど。
だって、あたしと同い年くらいだ。どっちかと言えば、危害を加える側じゃなくて、被害に合う側の子だと思う。
でも、ひとつだけ。
最近よく聞く、「電波くん」ってやつじゃなかろうか。ちょっと怖くなった。






作品名:もうひとつの出会い 作家名:きじま