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バレンタインは好きですか?

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バレンタイン。
静雄にとってあまり縁のなかった催事が突如、身近な出来事となった。
最近懐いた小さな女の子や、同僚、親友からの可愛くラッピングされた大小さまざまな箱。
甘いものが好きな静雄にとっては嬉しい限りである。
ただ同時に困り果ててもいた。
静雄は人の好意というものを受け取ったことが数少ないからだ。
煙草を吸いながら公園で並んだ箱をぼんやりと見つめていると、そこににこやかに奴が現れた。
やあ、シズちゃん。それもしかしてチョコレート?しかも3つ。ははっ、シズちゃんモテるね。そうだな…左から、小学生、殺人鬼、首無し、ってところかな?と、一通り品定めした後、こう言ったのだ。

「俺からもあげようか、バレンタインチョコ」
「いらねぇ」
「まあ、そう言わずにさ。シズちゃん甘いもの好きだろう?」
ちょっと待ってて、と静雄の止める声も聞かずに臨也は周囲を見回すと、すぐさま近くのベンチでこちらの様子を伺っていた女子高生に話し掛けた。
臨也と女子高生はいくつか言葉を交わした後、彼女は真っ赤に頬を染めて臨也に何かを手渡した。
戻ってきた臨也の手には綺麗にラッピングされた小さな箱。
「お待たせー、はい、バレンタインおめでとう」
その箱を目の前に差し出される。
「…何だ、それは」
「見て分からない?バレンタインチョコだよ。それと同じ」
静雄の脇に置かれたチョコレートを示す。
「何で俺に渡す?」
沸々と湧き上がる何かに声が低くなる。
「あの子さぁ、好きなんだって。俺のこと」
静雄が受け取らないことに業を煮やした臨也は隣に腰を下ろし、ラッピングを解き始めた。
何がしたいのか分からない。
いや、なんとなくは分かっている。だが、それを認めたくはなかった。
腹の内が気持ち悪い。まるで何か食べ合わせの悪いものでも食べたような、胸焼けがしているような、そんな感じだった。
「今日という日の為に最高のチョコレートを用意したのはいいものの、会えるかなんて分からない。池袋を歩きまわって困り果ててここに来たら、そこに偶然俺が現れたって訳。運命的だよねぇ。まぁ、そこにはシズちゃんも居たわけだけど」
一粒ずつ丁寧にラッピングされた箱の中から一つを取り出した。
「…何が言いてぇ」
意図が全くつかめない会話に苛々する。
「だからさ、ここのチョコレート凄く人気なんだよ。発売開始30分で売り切れてたとか」
そんな静雄を見て臨也は双眸を細めて笑い、夢魔のシンボルマークが描かれた銀紙を剥がしたチョコレートを一つ口に放り込む。
「…ねぇ、なんでだと思う?」
ああ、もう我慢ならねぇ。そう思うが早いか拳を握る。
ただ、それよりも少しだけ早く臨也が動いた。静雄の襟首を掴んで引き寄せ一気に距離が縮まる。
眉目秀麗と謳われている顔が視界を覆い、目が合うと臨也の笑みが一層深くなった。
開いたままだった唇から舌先を割り入れられ、チョコレートを一気に押し込まれる。
口移されたそれは一瞬で熱に溶け始め、口内に甘く広がっていった。
「そのチョコレート、媚薬なんだってさ」
離れ際にそう呟いて、トン、胸元を押されて突き放される。
「間抜けな顔してるよ、シズちゃん」
ふふ、と嬉しそうに笑うと、じゃあ、まったねー。と現れた時と同じように嵐のように去っていく。
静雄の元に残されたのは4つに増えたチョコレートと、媚薬だと言う未だ口の中に広がっている甘く少し苦味のするカカオの香り。
「…っんだぁああそりゃぁぁぁぁああ―!」
夢魔の顔を一つ粉塵にして、静雄の唸るような声が公園中に響き渡った―と、いう話。