アネモネ
何年も経ちました。
何世紀も過ぎていきました。
君の存在が消えてしまったと聞いても、よくわからないままで、たくさんの争いが起こって君のいた場所に他の誰かが立つのでしょう。
きっと誰かが死んでしまえば、誰かが悲しんで悔しくて、また誰かを恨んで殺してしまって。
ただぐるぐるとそのことが繰り返されて何重にもなった悲しみの重さに人は耐えられなくて、またぐるぐると繰り返していくのかもしれません。
それがわかっているのに繰り返してしまうことが1番悲しくて怖いことなのだと思います。
君が消えてしまって悲しんでいる人はもういないのかもしれません。
でも僕はいつまでも胸がギュウギュウと締め付けられて呼吸が出来なくなります。
このまま死んでしまうのかもと思うくらい苦しくなるのです。
だから今日君にお花を送りにきました。
真っ赤なアネモネ。
君は受けとってくれますか。
どうしたら君に届くのかわからなくて、仕方ないのでこの海に流すことにします。
流れて流れて、遠い君にいつか届くことを願って。
end